泡のような夢の跡

当時の関係者と並行して、ジュリアナの跡地に2012年から現在にかけてオフィスを構えるTBWA\ HAKUHODOに接触した。

彼らはもともとジュリアナが入っていたビルの5・6階にオフィスを構えていたが、業務の拡大に伴いオフィスの拡張が必要になった。その際に目をつけたのが、ジュリアナがあった1階のスペースだ。ジュリアナがかつて日本の流行の発信基地だったことに重ね合わせ、世界に向けて新しい創造性を発信する拠点としてこの場所に決めたのである。

改築にあたってはクリエイティブな空間を目指して、モダニティー(現代的)というモチーフのもと、ディスコとオフィスという異なった価値観の融合が重視された。巨大な空間を生かしつつ、ジュリアナ時代のお立ち台、VIPルーム、ラウンジ、バーなどは当時の面影を残して改築された。VIPルームは現在会議室などとして利用されているそうだ。

オフィス内の様子(提供)

一方で全体的に新しいものも取り入れられた。その例がSky Gridというシステムだ。これは時間に応じて自動で照明の照度・色味が変化するというものだ。元は倉庫であった1階には窓がないため、社員の人の時間感覚維持のために導入された。窓がないことは、他方では情報の機密性の確保につながる。

ここでは不利な環境をも逆手に取った空間形成がなされている。情報の機密性の高さゆえ、探偵は直接オフィスを目にすることはかなわなかったが、社員たちはそんなクリエイティブなオフィスの使い心地に満足を覚えているそうだ。

またこの会社には多数の塾員が在籍しているという。いや違う違う、そうじゃ、そうじゃない。探偵の所望は、同じ場所でも、もっと昔の慶大生なのだが……。

なおTBWA\ HAKUHODOではインターンの募集を行っているので、興味のある人はぜひとの案内を受けた。将来について何も考えていない探偵にとっては耳が痛い話である。




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