熊本を訪れたのは二度目だった。一度目は2013年。そして二度目は今回、2018年。この5年の間に熊本を大きな地震が襲った。2016年4月14日と16日の二度、熊本県内で震度7の地震が発生した。かつて訪れた熊本城の石垣が崩れている様子をニュースで見てショックを受けたことを覚えている。

5年ぶりに訪れた熊本城

市街地は以前とほとんど変わらず、人々も以前と同じ日常を取り戻しているように思えた。しかし熊本城の敷地内に入ってみると、地震の被害が多く残っていた。石垣は崩れたままのところが多く、危険であるためほとんどの場所が立ち入り禁止になっていた。

震災前の2013年に来た時には城の中にも入れたが、今回は城の周辺にも入ることはできず遠くから眺めることしかできなかった。あの頃に見た、城の下で武士の格好をして観光客をもてなしてくれた人たちもおらず、熊本の有名観光地の様相は大きく変わってしまっていた。

しかし、元の姿を取り戻すために熊本城はしっかりと進み始めていた。崩れた石垣の石は集められ、サイズごとに分けられていた。まだ散乱したままの石も多く、これから長い道のりではあるが一つ一つ積みあげていくしかない。どれだけの時間がかかっても、荘厳な熊本城が戻る日は必ず来ると信じて待とう。

復旧工事が行われている益城町

最も被害の大きかった益城町には、今もなお地震の爪あとが多く残っていた。至る所にある災害復旧工事の看板が被害の大きさを物語る。橋や下水道、崖など各地で復旧のための工事が行われていた。何気なく歩く道にも亀裂が入り、土地が隆起し盛り上がってしまった駐車場もあった。町を走るバスに乗っているときにも、身に感じる大きな振動で道路がゆがんでしまっていることがわかる。

地震から2年半が経っても未だ元の益城町には戻れていない。しかし、たくさんの工事中の看板は復興に向かっている証だ。震災関連死も含めて多くの方が亡くなったが、被災者の方々の心の復興も少しずつでも進むことを願っている。

各所で見られた「がんばろう熊本」「がんばろう益城町」の文字。私たちが暮らす東京は熊本から遠く離れているが、「がんばれ」ではなく「がんばろう」という言葉を贈る。私たちも私たちにできることは何かを日々考え、共に歩みたい。
(井上知秋)