安倍政権の最重要課題の一つに「女性が輝く社会」の実現がある。2015年には、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、女性の職業選択に資する情報の公表を事業主に義務付ける「女性活躍推進法」が成立した。今や女性が社会に出て働くことが当たり前の時代になった。しかし、管理職の割合が課長相当職以上(役員を含む)で13.2%(平成29年度)と、世界的に見ると日本の女性の社会進出の水準はいまだ低い。2020年までに30%という目標は遠い。
とはいえ、女性の就業率向上だけでなく管理職への進出も、日本では30年以上前から重視されてきた。山口積惠さん(74)は男女雇用機会均等法成立直後の1986年、勤務先のセブン‐イレブン・ジャパンで実力を認められ、無役職の状態から部長に昇進した。その4年後には女性初の取締役に就任した。
山口さんは企業のトップの意識改革が不可欠だという。結局、いくら下から働きかけても変わることは難しい。影響力のある人物の働きかけや制度づくりが第一だ。
政界では経済界よりもはるかに女性進出が進んでいない。女性活躍を推し進めているはずの政府がいまだ男性社会なのである。女性議員の割合は衆議院では10.1%、参議院では20.7%となっている。地方ではさらに割合が減少し、約3割の自治体で女性議員がゼロという状況である。
今年、「政治分野における男女共同参画推進に関する法律」が施行され、各政党が候補者の男女比をできる限り均等にすることが盛り込まれた。各党は候補者を平等に割り振るよう努力している状況だが、立場がおびやかされる男性議員にとっては良く思わない人も多い。そんな中、山口さんは今、政治団体WINWINの事務局長として、女性議員を増やすための支援を行っている。女性議員が増加すれば、保育所対策や、赤ん坊のためのミルクを粉からより使いやすい液体で普及させるといった、働く女性のための政策の進展も期待できる。
かつて福澤諭吉は女性であっても職業を持ち、自由な交際の場を設けて一身独立すべきだと述べた。性別の枠組みにとらわれないことや、男女で仕事の重みは同等であると受け入れることを、明治時代に説いたのだ。私たちは100年以上経過した今、これを受け止められているだろうか。男性並みの労働と子育てに孤軍奮闘する、そんな朝ドラのような状況でいたら、潰れてしまう。
学校にいる限りは男女の差や不自由さを感じることは少ない。子育てなどのライフイベントがある人は少数であるし、男女ともに家庭科が必修になったことで、家事に積極的な男性もあらわれた。しかし、社会人になったらどうだろうか。希望を失わず、男女ともに満足して活躍できる社会の実現は私たちの夢だ。
(杉浦満ちる)