皆さんは普段ミステリーを読むだろうか。現代では若者の活字離れが叫ばれて久しいが、今回改めてその魅力に迫るべく、ミステリー評論家で、ミステリー文学資料館編集委員の山前譲さんに話を聞いた。

多様化の進む現代社会においてミステリーの種類も多様化している。その先駆者となったのが松本清張だ。彼は日常の中に犯罪を置くことで、ミステリーを身近にしてブームを巻き起こした。ほかにも、女性作家の台頭により家庭的な視点が取り入れられたこと、高度経済成長に入り生活に余裕ができたことも影響している。

また、一口にミステリーと言っても、トリック中心なのか、人間心理が中心なのかによっても捉え方が変わってくる。恋愛小説でも、捉え方を変えればミステリーとなり得るということだ。

そしてミステリーを読むうえで欠かせないのが伏線だ。作者は作中に伏線を散りばめるが、熟練のミステリー読者になると、どの部分が伏線なのかが今までのパターンから分かってしまう。それに対抗しようとして、作者は新しい視点をトリックとして作品に取り入れる。いわば作者と読者の対決構図となっているのだ。

ミステリーのトリックは出尽くしたと言われることがあるが、全くそのようなことはない。既存のモノやシステムも視点を変えれば十分に利用することができるのだという。むしろスマホなどの最新機器は仕組みが複雑化しすぎていて、トリックには使いづらいそうだ。

「ミステリーの魅力は謎を論理的に解いていくプロセスにこそある」と山前さんは話す。謎解きはしばしばパズルに例えられるがまさにその通りで、ピースをはめていく過程、最後のピースがはまった瞬間の喜びこそが魅力なのだ。頭が柔軟なうちにたくさんの作品を読むことで、その喜びだけでなく、小説を読むことができるありがたみを実感することができるだろう。

(小野塚優太)