「美術」や「絵画」と聞いたとき、何が思い浮かぶだろうか。柔らかな色彩の風景画や大胆な筆遣いの肖像画など、印象派と呼ばれる芸術家たちの作品に基づいたイメージを想起する日本人は少なくないだろう。印象派の名前の由来となった作品『印象・日の出』を描いた画家で印象派の巨匠と呼ばれるクロード・モネが代表作である『睡蓮』大装飾画に着手したのはおよその100年前のことだ。

横浜開港以降の作品を主に展示する横浜美術館ではモダンアートの先駆けとなったモネの初期から晩年までの作品と後世代の作家の時代を超えた結びつきを見出す『モネ それからの100年』展が開催中だ。

日本初公開を含むモネの絵画25点と26人の作家による作品65点がモチーフや技法において共鳴し一つの展示を織りなす。筆触分割や淡い色彩など独特の技法がよく分かる初期、ロンドンで制作された『霧の中の太陽』のほか空気の揺らぎや光など触れることのできないモチーフを見事に描いた中期のモネの作品と後世の作家の作品を並べ両者のつながりを提示する1、2章、モネへオマージュを捧げた現代の作家の作品のみを取り上げた3章のあと再びモネの作品が登場する4章では壁一面に睡蓮を主題とした作品が展示され睡蓮に包み込まれるような体験ができる。

会場の様子(提供=東京新聞)

同時開催のコレクション展「モネ それからの100年展に寄せて」「幻想へのいざない 駒井哲郎展をきっかけに」ではモネと同時代の日本美術やモネ それからの100年展の後に鑑賞してモネとの共通点を見出せるような現代美術を展示。さらにモネ展に続く企画展で取り上げられる駒井哲郎の幻想世界に関連する作品につながり、近現代の美術作品に没入できる構成になっている。モネとの共通点や見どころが解説されている作品が多く、普段なら通り過ぎてしまうような抽象的な作品に見入る人も見られた。

主任学芸員の松永さんは「モネというフィルターを通して、一見しただけではよくわからない現代美術作品への向き合い方を発見し、楽しんでもらいたい」と話す。

横浜美術館はみなとみらい駅と直結した商業施設MARK ISの正面にあり、赤レンガ倉庫やコスモワールドにも歩いていくことができる。まぶしい日差しに照らされたみなとみらいの片隅の、ひんやりとした館内で涼みながら美術に包まれる文化的な夏の午後を過ごしてみてはどうだろうか。

なお、午前10時の開館直後から昼にかけては混雑するため、落ち着いて鑑賞したい場合は15時ごろから18時の閉館までの時間帯に訪れることを推奨する。入館は閉館時間の30分前までのため注意。

(川上ゆきの)

モネ それからの100年

2018年7月14日(土)~9月24日(月・祝)
会場:横浜美術館(神奈川県横浜市)
時間:10時~18時(9月14日、15日、21日、22日は20時30分まで/入館は閉館の30分前まで)
休室日:木曜日
料金:一般1600円 大学・高校生1200円 中学生600円(前売券は200円引き)