「歴史と文明」、「法律学」。SFCで開講されているこの二つの講義に共通しているのは「アニメ」を積極的に使用することである。日吉や三田などでも話題となっているこれらの授業の全貌について、授業担当者である二人の講師に話を聞いた。

SFCの基盤科目「法律学」と先端科目「歴史と文明」は、授業内で積極的にアニメを用いることで、他の授業と一線を画している。「法律学」では、先生が作成するスライドに沿って、リーガルマインドや論理的思考力を学ぶことができる。「歴史と文明」では、アニメを交えながら中国哲学を分かりやすく解説する。

そもそも授業においてアニメを用いるきっかけは、どのようなものだったのか。「歴史と文明」を担当する川田健講師は「何かの冗談でたまたまやっただけだった」と語る。「最初はアニメ『みなみけ』を流したと記憶しています。翌週からは普通に授業をしました」。すると、学生から抗議がきたという。「なんで今週はアニメがなかったんだ、って。ええって感じですよね(笑)」

「法律学」を担当する長島光一講師は、アニメを講義に用いる際に注意していることがあると話す。「アニメを授業で使うことに対して、賛否はあります。もちろん、アニメが嫌いな人たちもいるだろうし。そのあたりに関しては気を遣いながら講義を行っています」 また長島講師は、多くの人が学ぶ場だからこそ、気を遣わなければならない点は多いと語る。だからこそ、なるべく多くの人が知っているような、メジャーな作品を使う努力をしているそうだ。

では、これらの授業を通して、二人の講師は学生に何を伝えたいのか。

川田講師は、「中国という国を理解する上で背景にある、基本的な価値観を理解してほしい。また、授業では儒学思想を中心に講義しているので、特に日本との差異を認識してほしい。そして、古典を現代に生かすためにはどうすればいいのか、考えてもらいたい」と話す。講義をより深く理解するためにも、アニメを役立ててほしいという。

長島講師は、法律学という科目自体の難しさを指摘した上で、難しい学問をそのまま教えても、進んで勉強しようと思わない学生が多いのではないかと主張する。

「しかし、アニメを使うことでそのハードルが下がるのです。身近な面白いことと法律はつながるということを感じてほしいですね」。長島講師はこのように力説する。講師の授業のコンセプトが学生に伝わっているのは、「法律学」の授業自体の人気ぶりからも明らかである。

「アニメが授業を分かりやすくする」。二人の講師は、新しい授業のかたちを生み出すに至ったのである。

(浜中智己)