NHK Eテレの人気番組「デザインあ」の企画展、「デザインあ展 in TOKYO」が日本科学未来館(東京都江東区)で開催中だ(10月18日まで)。
「デザインあ」は、身の回りで当たり前に存在しているモノを、「デザイン」の視点から徹底的に見つめ直すことで、「デザインの面白さ」を伝え、「デザイン的な視点と感性」を育む教育番組だ。今回の展覧会は、「番組の制作者が作ることで、(番組と)同じ考えを映像から空間に具現化したもの」だと映像ディレクターの中村勇吾氏は表現する。
展覧会は、「観察のへや」「体感のへや」「概念のへや」の三つのエリアに分かれている。
「観察のへや」は、「お弁当」「容器」「マーク」「なまえ」「からだ」の五つのテーマを「みる」「考える」「つくる」の3ステップで展示している。
例えば「お弁当」のテーマは、緻密に再現された食品サンプルで構成されている。4種類のお弁当がどのような食材を使っているのかを観察する「つめられたもの」。最初は同じ具材でも、調理の仕方や手順で目玉焼きやスクランブルエッグなどに変化する卵を、殻に入った状態から時間ごとに変化を追う「たまごの変身」。お弁当の梅干し部分をくり抜いた箱に頭を入れることで、梅干しの視点でおかずを眺める「梅干しのきもち」。いずれも身近なものでありながらも、普段とは違った視点で見つめ直すことで新たな気付きが得られる展示ばかりだ。
続く「体感のへや」は、暗室の四方の壁面いっぱいに360度映像が映し出される。映像と音楽がピタリとシンクロした四つの作品は、観る者を魅了する。その中の一つ、「森羅万象」は、家紋が円と線のみで描けることを鮮やかに表現している。「音楽は聴覚に対するデザイン」だと表現する音楽ディレクターの小山田圭吾氏の手掛けた音楽は、耳に残り、会場の外でも思わず口ずさんでしまう。
展示の最後は、「概念のへや」だ。「速いって何? 暗いって何?」身近な言葉でありながら、幼い子どもに聞かれたとき、その概念の説明は難しい。デザインは、そういった「見えない」概念を「見える」化し、直感的に子どもでもわかりやすく理解させることができる。
「じかんがくる」という作品では、アナログ時計と映像が一体となったものがいくつか並んでいる。それぞれメトロノームやカレンダー、サラリーマンの1週間の生活が映像として流れる。「時間」と一口に言っても、いかに広い意味を持った概念であるかを改めて理解することができる。
日本科学未来館では、デザインを新しい知と捉え、科学技術や社会問題の解決に役立つ重要な手段として位置づけている。総合ディレクターの佐藤卓氏は、「デザインに関わらないものは何もない」と語る。「デザインあ展 in TOKYO」は、様々な分野で応用可能な「デザインマインド」を楽しみながら習得できる内容となっている。
本展は、展示の見方などの解説はない。中村氏は、展示を「自由に見て聞いて感じ取ってほしい」と呼びかけた。あなたも会場へ足を運び、身近なモノから「あ!」と思えるような体験をしてみてはいかがだろうか。
(山本啓太)
企画展「デザインあ展 in TOKYO」
開催中(10月18日(木)まで)
会場:日本科学未来館 1階 企画展示ゾーン(東京都江東区)
時間:10時~17時(ただし、土曜日、祝前日(9月16日、9月23日、10月7日)は20時まで開館、常設展は17時に終了/入場は閉館の30分前まで)
休館日:9月4日(火)、11日(火)、18日(火)、25日(火)、10月2日(火)、9日(火)、16日(火)
料金:大人(19歳以上)1600円 中人(小学生~18歳以下)1000円 小人(3歳~小学生未満)500円 2歳以下無料