―慶應塾生新聞を含む大学新聞とのハーフ新聞作成の経緯を教えていただけますか。
販売局が中心になって企画しました。ハーフ新聞作成の時期は4月。新入生を含めて学生の在校率が高いということで、この時期に未来読者として学生の皆様に新聞というものを手にしてもらう機会をつくろうと。この新聞をハーフサイズにすることで、変わった印象を持たせるという意図もありました。
―朝日新聞社と大学新聞との提携をしようと思ったきっかけを教えていただけますか。
やはり、「新聞」というのがキーワードになっています。運動が盛んだった時期には大学新聞が政治的な性格を強く帯びて、学内と表裏一体になったケースがあるので、学生新聞と提携することへの不安感がありました。しかし、そういうところで、また可能性を探ってみようということで学生新聞にアプローチしました。
―どのような形での提携となりますか。
相互利益が大前提。朝日新聞側は大学新聞との提携から購読の拡大につながるヒントやきっかけをもらい、大学新聞側は記者研修などを通じて新聞作りのノウハウを学ぶといったことでしょうか。
朝日新聞社と大学との今までの関わりとしては、就職セミナーなどがあります。先輩に参加してもらったり、体験記を書いてもらったり。朝日の講師が随時講師になる大学と提携した講座を持っていたりもします。
これはいわば大学当局との関係です。そこからさらに進んで、学生とのじかの付き合いを広げていきたいということですね。
―新聞業界の現状についてはどう見ていますか。
今の時代、新聞の媒体としての存在感が非常に薄くなっているという現状は認めざるを得ないと思います。私が大学生だった頃はインターネットはなかった。プリントされた新聞、音声で伝わるラジオ、そして映像が加わったテレビ。新聞はプロ集団が作るということもあったが、情報の発信がプロである必要がない時代に入った。情報の発信源が分散し、週刊紙などを含めたメディアの独自性がどんどん薄れてきました。
―それでは、新聞社はこれからどう生き残っていくのでしょうか。
簡単ではない。収入の柱の広告はネットメディアが増えて減っているし、もう一つの柱の販売も世帯減や無読層の増加で厳しい状況です。打開の妙策が見つかったわけではありませんが、新しいビジネスを積極的に探して収入の多角化を進めようとしています。
―各新聞社のインターネットへの意識はどのようなものですか。
新聞社にとっては、インターネットの功罪の「罪」の部分だと思うんですが、インターネットが情報は「タダ」という意識を広げた。新聞社自身が情報をネットに安く売ってしまうという現象も起きています。そんな状態が続けば共倒れになりかねません。それは取材の担い手の消滅につながり、ネットへのニュースも提供できなくなる。ニュースの受け手にもそこを理解してもらうよう努力しなければいけないでしょう。
―最後に塾生にメッセージをお願いします。
新聞の面白さを見直してもらって、新聞の講読者になってほしい。信頼できるニュース、整理がついた情報、確実に情報が残るアーカイブなど、新聞が持つ有用さを意識してほしいです。
(遠藤和希)