法隆寺、東大寺大仏殿、姫路城――。日本人は古来より様々な建築をつくってきた。そして現代でも隈研吾や安藤忠雄など、世界に誇る日本の建築家たちがいる。
そのような建築家たちの作品と伝統の遺伝子を体感できる展示が今、東京都港区六本木の森美術館で開催されている。
展覧会「建築の日本展―その遺伝子のもたらすもの―」は、森美術館開館15周年記念として開催されている。森タワー53階の美術館展示室では、縄文時代から現代まで、日本における様々な建築が、模型と写真で展示されている。壁面の高い場所には建築家たちが紡いできた言葉の数々、低い場所には作品解説がなされ、情報量の多さも魅力だ。
展示は9つのセクションに分かれ、テーマがそれぞれ設定されている。
第1セクションのテーマは「可能性としての木造」。入り口でミラノ万博日本館の外壁に使われた立体木格子(北川原温設計)が来館者を迎える。天井まで届く巨大な木組みの壁は、来館者を圧倒することだろう。
他にも隈健吾の木造橋や、木造高層ビルなどが展示されている。伝統建築から受け継がれてきた木という建材への可能性を感じさせる。
第2セクション「超越する美学」では、うってかわって日本建築の簡素さゆえの美しさが語られる。
シンプルな造りにこそ神聖さや美しさを感じる伊勢神宮本殿。単純な構成でありながらも気品がある谷口吉生の「鈴木大拙館」。古代から現代へと受け継がれる日本建築における超越的な美を、まさに体感することができる。
第3セクションでは、「安らかなる屋根」というテーマの下、高温多湿な日本の、大きな屋根に焦点が当てられる。
富士山をイメージしたと言われる日本武道館。大きくうねった屋根が印象的な山形県鶴岡市の荘銀タクト鶴岡。日本の様々に個性的な屋根を持つ建築たちが一堂に会す。
それらの屋根たちは時に新しさを感じさせ、時に寺院のような古さを感じさせる。西洋から持ち込まれたモダニズムの概念が、日本の伝統と複雑に絡み合いながら発展してきたということを、私たちに教えてくれる。
その先も日本の建築家たちのこだわりの作品が続々と展示される。黒川紀章や安藤忠雄、丹下健三など、日本を代表する建築家たちの作品も多々集まる。だがそれは、ここで文章を読むよりは、実際に足を運んで体感してみてもらいたい。
展覧会では、体験型の展示も行われている。ものつくり大学が製作した国宝「待庵」の原寸再現。「Power of Scale」というレーザーファイバーと映像、音楽を用いて、日本の個性的な建築内の部屋を、バーチャルで体験できる展示。二つとも空間の中に入って見ることができる展示であり、模型や写真だけでは感じ取れない、臨場感を来館者に提供してくれる。
この展覧会は、題名にもある通り、「日本建築の遺伝子」がキーワードだ。縄文時代から現代へと脈々と続く、日本の建築家たちのDNA。そして、それを受け継ぎつつも、新たなものを作り出していく現代の建築家たちの想像力。この二つの力をこの夏体感してみてはいかがだろうか。
『建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの』
2018年4月25日(水)~9月17日(月・祝)
会場:森美術館(東京都港区)
時間:10時~22時(火曜は17時まで、入場は閉館の30分前まで)
料金:一般1,800円 高校・大学生1,200円 4歳から中学生600円 シニア(65歳以上)1,500円