今日一日、座って過ごした時間がどれくらいなのかを考えてみよう。大学生であれば、講義、課題、食事、ネットサーフィン、ゲームなどの時間が思い起されるのではないか。今度は反対に今日一日、身体を動かしていた時間がどれくらいなのかを考えてみよう。おそらくこの時、自分の運動不足を改めて認識する人は少なからずいるのではないか。実際、WHOの調査によると、15歳以上の日本人の約65%が運動不足であるとされている。そんな運動不足問題について、慶大スポーツ医学研究センターの小熊祐子准教授に話を聞いた。
「大学生活で運動をしない習慣が身についてしまうと、社会人になってからストレスが多くなったときに、メタボリックシンドローム(メタボ)、血圧の上昇、糖尿病などに直結します。あるいは大学まで運動をしていた人は、運動をしなくなり、たくさん食べる食習慣だけが残り太ることがあります」と警鐘を鳴らす。このように、運動不足による弊害は、年数がかなり経ってから出てくる場合も多い。今の自分だけでなく、10年後の自分も視野に入れて、運動習慣を考えるべきだろう。
一方で、普段から積極的に身体を動かすことで「糖尿病」「心臓病」「脳卒中」「がん」「うつ」「認知症」「メタボ」になるリスクを下げられる。また、運動をすることによって意外な効果が得られる。小学生を対象にした研究では、定期的な運動が学業成績に寄与することが示されている。その他にも、不安を取り除く効果、集中力を高める効果も認められている。
しかし運動といっても、具体的に何をすればいいのかわからないという人も多いだろう。「sedentary(座位行動)を減らし、physical activity(身体活動)を増やすことが重要です」と小熊准教授は答える。ジムに通うのはちょっと……と思う人でも、スタンディングデスクを使って仕事中の座っている時間を短くする、一駅前で降りて歩く、テレビを見ながらストレッチをするといったちょっとしたことで運動不足を解消することができる。「できることから少しずつ始めていくことが重要です」。これが運動習慣構築の最短ルートなのかもしれない。一日10分でも長く身体を動かすことを心がけたい。
(伊藤滉一郎)