私たちの耳にもやっとなじみ始めた「eスポーツ(e-sports)」という単語。ビデオゲームを競技として捉えたこの新ジャンルのスポーツは、ゲームをプレーすることを生業とするいわゆる「プロゲーマー」の出現により、市民権を獲得し始めている。
しかし、「ゲームでお金を稼ぐ」という行為に違和感を抱く読者も多いことだろう。そこでプロゲームチームのスポンサーを務めるWekids Inc.(以下Wekids)の西谷麗CEOに、eスポーツという業界に抱く疑問をぶつけた。
Wekidsは西谷さんが慶大経済学部を卒業後、数社のゲーム関連企業への勤務を経て立ち上げた企業で、FPS(ファーストパーソンシューティング)ゲーム「Call of Duty」の公式ライセンスチームである「Rush Gaming」の運営をしている。「ライセンス」とは、日本eスポーツ連合(JeSU)が2018年から公認ゲーム6タイトルに向けて、それらをプレイするチームに発行しているいわば「プロの証」だ。「Call of Duty」では現在Rush Gamingを含めて6チームに与えられている。
現在JeSU公認ゲームにおいては、ライセンスを持っているかどうかがプロゲーマーの定義となっているものの、実はライセンス制度は日本独自だという。ここに、海外と日本のeスポーツを取り巻く環境の差が顕著に表れていると西谷さんは語る。「海外のプロゲーマーって億万長者だからね」という西谷さんの言葉通り、海外では優勝賞金が億を超える大会も珍しくない。まさにアメリカンドリームならぬゲーマーズドリームといったさまだ。対して日本では、賞金が高くても数百万円にとどまっている。さらに、海外ではゲームに対する人々の視線は日本よりずっと熱く、大会やチームに協賛するスポンサーの数や経済規模は日本の比ではない。まさに産業としての規模が桁違いなのだ。
これらの問題の根底には、大会に高額な賞金を賭けにくい日本の法制度が存在する。その打開策として賞金を「プロの高度なパフォーマンスに対しての報酬」と見なし、プロの技術の保証としてプロライセンス制度が作られたのだ。
依然として産業規模の小さな日本において、プロゲーマーの成功には「個人の魅力」が必須だと西谷さんは語る。ゲームのプロフェッショナルであるのはもちろん、選手おのおのがコンテンツ力や社会に対する影響力を持ったタレント性を発揮するべきだという。実際にRush Gamingでは選手がSNSで個人のチャンネルを開設し、多くの支持者を得ており、現在進行形で新たなファンを獲得している。このようなタレント性を持ったプロゲーマーの誕生こそが、eスポーツ業界に資本が流入するきっかけになると西谷さんは考えている。今後、ゲームの支援にとどまらず選手個人のプロデュースまで手掛けるWekidsのようなスタイルはスタンダードになっていくのだろう。
(安宅真哉)