日本では若年層の新聞離れが叫ばれて久しいが、これはなにも日本に限った話ではない。イギリスでも深刻な問題の一つになっている。もともと発行部数が日本に比べて低いイギリスだが、最近の学生の傾向として、ニュースはインターネットで事足りるという人も増えてきており、新聞業界はますます冷え込んできている。
そのような状況の中、イギリスの新聞社は現在学生とどのように付き合っているのか、現状をタイムズ紙の記者、ティム・ブラモア氏に尋ねてみた。

「ネットでも記事の価値変わらず」

―まずはあなたの学生時代の話から聞かせてください。あなたにとって新聞とはどのような存在でしたか。
とても身近な存在でしたよ。その当時は今のようにインターネットもなかったしテレビも24時間ニュースを流すことなんかなかった。唯一の情報源といっていいね。読むことが生活の一部になっていた。だから周りの友達も、みんな新聞を読んでいたよ。
―新聞社にとって学生はどれほど重要な客層ですか。
短期的に見れば、あまり重要ではない。しかし長期的に見れば、彼らが将来を担うのだからとても重要だ。
―ですが今、学生はインターネットでニュースを読む人が増えています。新聞業界はこの傾向にどういった対応をするのでしょう。
順応しようとしているよ。たとえばタイムズ紙では5月4日からweb first policyというものを導入する。これはまずニュースをネットに最初に載せて、その後重要だと感じたニュースを紙面に載せる、ということだ。
―それでは購買数が下がってしまうのでは。
そこまで大きな差が出るとは思わないな。学生はもともと新聞を買っていないだろうし。もちろん購読者を増やすためにキャンパスで販売する新聞の価格を下げる、というようなこともしている。でもタイムズ紙の当面の目標は、ウェブのニュースを紙面のニュースと同じ価値を持たせられるように頑張ることだ。タイムズ紙というブランドを学生にアピールしたいのだよ。ネットにニュースが移っても新聞社のニュースを集める、という本質は変わらない。ニュースを配信する手段が変わるだけさ。私のような世代が消えれば、紙という媒体はネットにメインの座を譲るだろう。それを見越してのことだ。
―では最後に、学生はどのようにメディアと付き合ったらいいか、意見を聞かせてください。
個人的にネットニュースが隆盛を誇るのはいいことだと思うよ。これまでにない意見も聞けるからね。だけど新聞やほかの媒体も見てほしい、情報に多角的にアプローチしてほしい。そして情報を信じないことだ。質問をする癖をつけてほしい。民主主義は質問することによってよくなるのだから。

(谷翔太朗)