今年4月、年間来場者数3千万人を誇る東京ディズニーリゾートが開園35周年を迎えた。リピーター率は驚異の9割超え。まさに時代を超えて人々に愛されるテーマパークだ。人々がディズニーに惹かれる理由、受け継がれるウォルト・ディズニーの想いとは。
東京ディズニーリゾートのモデルとなった、米カリフォルニア州に位置するディズニーランドが誕生したのは、1955年のこと。第二次世界大戦終結から10年、ようやく世界が平和に向けて一歩を踏み出し始めた時期だった。
ウォルトは幼い娘を連れ、遊園地にたびたび訪れていた。しかし、そこで彼が感じたのは楽しさではなく、子供が遊ぶのをただ眺めるだけの憂鬱であった。大人も子供も楽しめる遊園地がないことに疑問を覚えたウォルトは、15年もの構想を経てディズニーランドを誕生させた。待ち時間にも世界観を楽しめるような工夫、徹底されたおもてなしと清潔感、作り込まれたショー。ワクワクや感動などの感情の共有は喜びになる。ウォルトの願いはほかならぬ、家族の笑顔だった。
インターネットやスマートフォンが普及した現代では、家庭内でも会話が減り、個人化が進んでいる。人と人とのつながりの希薄化はやがて孤独を生む。隣人と同じ時間を共有し、夢を膨らませるという、失われつつある空間がここにはある。ウォルトは、「大人も子供も皆が楽しめる遊園地」を実現させた。
ディズニーリゾートを語る上で欠かせない存在が、表情豊かでかわいらしいキャラクターたちである。絵を描くことが大好きであったウォルトは、漫画家を目指すも挫折しアニメーターに転向する。設立したデザイン会社は倒産、やっとの思いで立ち上げたディズニー・ブラザーズ社にまでも倒産危機が迫る。
疲弊したウォルトに希望を与えたのは、会社に住みつく一匹のネズミだった。「夢を求め続ける勇気さえあれば、全ての夢は必ず実現できる。忘れないでほしい。全ては一匹のネズミから始まったということを」。1928年、ウォルトは嫌われ者のネズミを、誰からも愛されるキャラクターへと変えた。
彼は生前、こんな言葉も残している。「ディズニーランドは決して完成することはない。世界に想像力がある限り、永遠に成長し続ける」。ウォルトが後世に求めたものこそ、この自由な想像力なのではないか。
思考の画一化は、ときに恐ろしい力を生む。正しいことが正しいことでなくなり、過ちが過ちではなくなる。幼い頃、誰もがそうであったように、大人になっても夢を持つことを忘れてはならない。ウォルトの想いが詰まったディズニーリゾートが、この先も残っていくことを祈る。