《もう一回ちゃんと勉強してもいいかな》
テレビの普及前から出演を果たし、現在に至るまでテレビや映画の第一線で活躍し続ける塾員、石坂浩二さん。俳優業だけでなくバラエティーやナレーションに至るまでその活躍の幅は広い。世代によって違えど、石坂さんの番組や作品に誰しも思い出があるのではないだろうか。最近では、昨年テレビ朝日で放送された、倉本聰脚本のお昼の帯ドラマ『やすらぎの郷』での活躍が話題となった。
石坂さんは、普通部から入学し、塾高を経て法学部法律学科に在籍した。普通部の頃から演劇への興味は深く、演劇に没頭する日々を過ごした。慶大在学中には大河ドラマ『太閤記』の石田三成役に抜擢された。
一方で、学業との両立は困難を極めたという。「つい最近まで、あと一つ(単位が)取れないから卒業できないっていう夢を見てましたから」。当時の必修科目だった体育の単位を取得できず、三田から日吉に単位を取りに行く来日もした。留年も2度経験した。「もう一回ちゃんと勉強してもいいなと思いますね。先生の考え方に今思うともう少し反論できたのかなと思ったりします」と今でも学業への意欲を持っている。
石坂さんはプラモデルや絵画などの造詣が深いことでも知られる。趣味に関して、自分一人では理想を追いきれないこと、皆で協力することが大事ということが演技と一緒だと語る。「自分の生き方と似ている趣味を持つってことが大事だと思いますね」
また、読書について「必修みたいなもの」と話す。役者にとって、「考える」ための「言葉」の蓄えは多いほど良い。読書の継続が石坂さんのマルチな才能を開花させる。
新入生に向けては、「(大学生活は)せっかく今まで出会ったことがない人たちと会うチャンスじゃないですか。カルチャーショックを受けるような人たちと付き合うことがすごく大事だと思いますよ」と自らの塾生時代を振り返りながら語った。
(杉浦満ちる)
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時には俳優、またある時にはバラエティ番組でのタレントとして、テレビで幅広く活動している石坂浩二さん。慶大在学中の1962年にデビューを果たし、半世紀にわたって常に第一線で活躍している。41年生まれの石坂さんの幼少期は、娯楽が現在に比べ少なかった時代だ。数少ない娯楽の中で演劇に興味があったという。
慶應普通部に入学後、演劇部を自ら立ち上げた。そこでは放送劇を制作し、女形に挑戦したこともあった。「演劇ではできなかったけど、放送劇だったら女形もやりやすいんですよ。変なことで気持ち悪いでしょうけど」
高等学校では、演劇部のほかに、二つの劇団に所属し多忙を極めていた。授業に出ず部室にいたこともあり、先生に見つかって学校中を追いかけ回されたこともあった。
大学在学中には、大河ドラマ3作目『太閤記』で石田三成役に抜擢された。当時のNHKは学生を連続ドラマに出演させることに厳しかった。卒業できるよう学業に専念する旨の誓約書を書き、出演が許された。
結局、2年間の留年を経て卒業を果たした。卒業後は、劇団四季に入団した。当初は、演出や脚本などスタッフを目指していた。脚本を務めた劇団四季の子供向けミュージカル『王子とこじき』は、現在でも上演され続けている。スタッフとして働きながら、役者としても登壇する生活が続き、ついには体調を崩してしまった。以降は、俳優業に専念することとなった。
俳優の傍ら70年代以降、バラエティ番組でも活躍している石坂さん。『開運!なんでも鑑定団』では12年間MCを務めるなど、長寿番組も多い。バラエティ番組に出演するにあたって、「大前提として見られているわけだから、お客様には自分の自然な姿を見てもらうのが一番良い。(自分の特徴は残らず)情報だけ残る形が一番いいかなと思っていますね」。
石坂さんの持ち味と言えば、独特の低音が印象的だ。劇団四季に入団後、ボイストレーニングを始め、以降声のトーンを下げる努力をした。訓練の末、現在ではボイストレーニングに行かなくてもある程度の調整ができるようになったという。ナレーションを務めるうえで、バックに流れる音楽の調にあった声を出すことを意識している。石坂さんは、番組に音楽が入っていなければ仕事を引き受けないそうだ。
テレビ番組で幅広いジャンルで活躍している石坂さん。これからのテレビについて、「今はスマホで映画とか見られる時代ですけども、やっぱりそんな小さい画面では、出た甲斐がないですよ。テレビ局もちゃんとそういうことも考えなきゃいけない時代になってると思います」。
(山本啓太)
石坂浩二(いしざか・こうじ)
慶大在学中の1962年にテレビドラマ『七人の刑事』でデビュー、卒業後劇団四季に入団。NHK大河ドラマ『草燃える』『元禄太平記』などテレビドラマで人気を経て、1976年『犬神家の一族』の金田一耕助役に主演、以後市川崑監督でシリーズ化され原作ファンにも絶大な支持を受ける。市川崑監督作品には『細雪』、『おはん』、『ビルマの竪琴』、『忠臣蔵 四十七人の刺客』など多数出演。作家、司会者、クイズ番組の解答者としても活躍。2009年NHK放送文化賞を受賞。