上京した慶大生が多く住む街、元住吉。日吉からたった一駅というアクセスの良さ。これからここで暮らす新入生や既に生活している塾生の新しい発見の手助けに―。記者5人で調査してきた。
chai café
お昼時、まず足を運んだのは、元住吉駅から徒歩6分の「chai café」だ。店構えからいわゆる『インスタ映え』するこのカフェで、私たちは「気まぐれランチドリンク付き(1100円)」を注文。
気まぐれランチは、白菜のクリームシチューをメインに、彩り豊かな野菜と、スープが添えられていた。お店の方によれば、コンセプトは地場もの・手作りの料理で、「お母さんの家庭料理と同じように、毎日食べても飽きないものを提供する」ことだそうだ。その言葉通り、メニューには、「気まぐれランチ」という字の側に、全く但し書きはなく、料理が運ばれてくるまで、それは分からない。童心に返ったような、ワクワクした気持ちが味わえるメニューなのだ。
食後のドリンクは、チャイラテと煎茶ラテを注文。チャイラテは、インドのミルクティーで、香辛料が入っていることが特徴的な飲み物だ。店名に「chai」とあるが、「チャイ専門店」というわけではなく、店主が昔飼っていた犬の名前が由来だという。濃厚でとてもおいしいチャイラテを頂いた。そして、抹茶より色が残り、癖が少ないという理由で煎茶を使用した、煎茶ラテは、写真を撮りたくなるような、見た目も楽しめる一杯だった。
「Chai café」は、料理一つ一つに店主の「優しさ」という名の、こだわりが垣間見えるお店だ。上京し、新たな生活が始まる新入生、ホームシックになりそうなら、足を運んでみてほしい。温かい料理と店主が迎えてくれるだろう。
川崎市平和館
お腹を満たし続いて向かった先は、元住吉駅から徒歩10分のところにある川崎市平和館である。川崎市と戦争の繋がりに意外性を感じたが、この施設が併設される中原平和公園は元々、米軍の出版センターとして接収されていた土地であった。土地の返還を機に、戦争について知る身近な施設として、平成4年に平和館はオープンした。
一階の体験コーナーには実寸大の防空壕が再現されている。暗く閉め切った空間で、当時の人々が感じていたであろう不安や恐怖に思いを馳せる。
二階では、第二次世界大戦期の川崎市周辺にどのような被害があったのか、また当時川崎の方々がどういった生活を送っていたのか、戦争で実際に使われた道具を通して伝えられている。実名の記された赤紙、戦地から家族へ送られた手紙、ボロボロになった軍服。生々しい展示品の数々は、戦地へ赴いた人々は決して特別な集団ではなく、それぞれ大切な家族を持つ、ひとりの人間であったことを教えてくれる。
また、日吉付近にあった海軍施設の模型によって、自分たちが生活する身近な場所に戦争の痕跡があることも知った。
順路の最後には、世界平和への願いも込めて、現在世界各地で起こっている紛争や戦争に関する展示も行われている。このような展示から世界平和への取り組みを川崎市から始めていこうといった意気込みが感じられる。
戦争は決して過去のことではない。時には、大学へ行った後にこういった場所で考えるのも良いのではないのだろうか。
だんごの美好
駅に戻り、おやつを食べにブレーメン通り商店街にある「だんごの美好」に立ち寄った。まず目を引くのがショーケースにずらりと並ぶ様々な和菓子である。中にはチーズクリーム大福、抹茶クリーム大福、ごま餅など珍しい商品もある。そしてその値段の安さにも目を引かれる。頂いたお団子は他店より少し大きめに作られており、満足感で満たされる。大福はもちもちとした食感と優しい甘さを楽しめる。太巻きやおにぎりも売られているため、お昼や晩御飯にも最適だ。授業やバイト、サークルで忙しい日々のちょっとしたご褒美に、食べれば思わず笑みがこぼれる和菓子はいかがだろうか。
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賑わう商店街、故郷を思い出させてくれるカフェ、平和を考える施設。
「便利で安くて美味しい」の中に奥深くてあたたかい空間がある。元住吉はそんな素敵な街だ。その温かさに触れた時、新たな居場所をきっと好きになれるはず。