国立感染症研究所は、先月15日から21日までに全国の医療機関を受診したインフルエンザ患者数が推計約283万人に達したとの推計を発表した。昨年の同時期と比べ76%増の数値で推移している。国立がん研究センター中央病院の岩田敏感染症部長によると、今年は流行の立ち上がりが例年よりも早く、今月上旬にもピークを迎える見通しという。
インフルエンザには二つの感染経路がある。咳やくしゃみの飛沫を直接吸い込むことで感染する飛沫感染と、付着した飛沫に接触し体内にウイルスを取り込んでしまう接触感染だ。飛沫による感染は、マスク着用を徹底する、咳やくしゃみが出る際は衣服の袖で口元を覆うなどの「咳エチケット」によって防ぐことができるが、後者の予防には日常の手洗い・うがいが欠かせない。うがい薬の使用・不使用に関係なく、物理的に水うがいをするだけで十分だという。
感染予防のもう一つのキーワードは「加湿」だ。絶対湿度が下がる冬場、乾燥を好むインフルエンザウイルスは、屋内外の環境で生存しやすくなる。そのため、洗濯物を部屋干しするなど、室内の湿度を保つことが重要となる。体内の水分を逃さないという点では、安眠効果で近頃注目を集める「口閉じテープ」も有効だ。口にテープを貼って就寝することで鼻呼吸を促し、口内の乾燥を防ぐことができる。
感染したら 患者周囲も注意を
インフルエンザの潜伏期間は平均で2、3日、最大で1週間と言われる。発熱などの症状が出る前日から、鼻水などの形でウイルスが排出される可能性もある。咳やくしゃみ、節々の痛みを伴う発熱など少しでも体の不調に気づいたら、周囲に感染が広がらないよう一層の配慮が必要だ。反対に、解熱後は最低2日間、外出を避けることが推奨される。
感染時にもう一つ注意しなければならないのが、未成年のインフルエンザ患者に多く見られる異常行動だ。厚生労働省は、抗インフルエンザ薬の服用との因果関係は不明だとしながらも、異常行動について注意を呼びかけている。
インフルエンザ発症時に限らず、高熱により脳神経が一時的に興奮症状を起こす「熱せん妄」が原因である可能性が高い。岩田部長は、対策として▽戸建て住宅では患者を地上階に寝かせる▽集合住宅の高層階では窓に鍵をかける▽患者が小児の場合、親が注意して観察する——ことを勧める。
インフルエンザワクチンの接種は、インフルエンザの重症化や発症自体を防ぐ一つの手立てではあるが、予防接種を済ませていても感染の可能性はゼロではない。「睡眠が一番の薬」と岩田部長。「どんな感染症でも、身体が疲れていると免疫力は低下します。受験生は頑張りすぎて徹夜しないように」
(広瀬航太郎)