年が明けて先月10日の午前3時、探偵は兵庫・西宮市内の路上で震えていた。家から閉め出されたわけでも、お金がなかったわけでもない。西宮神社で行われる年始め恒例の開門神事、福男選びに参加するためだった。
「福男になって受験生に福を振りまいてほしい」と依頼人から頼まれていた。そんな無茶な、と口では言いつつ内心ウキウキでGoProを頭に装着する姿は、はた目に見ればさぞかし滑稽だっただろう。
「開門!」
午前6時、宮司の掛け声と太鼓の音とともに参加者が一斉に走り出す。抽選の末、後方のブロックに待機していた探偵は、「一番福」の福男が本殿に到着しようかというタイミングでスタートした。
まず50メートルを走り抜けると、最初の難所が見えてきた。参道がほぼ直角に曲がる「天秤カーブ」だ。毎年ここで転倒者が続出し、参加者はふるいにかけられる。
直線100メートルの「福男道」に差しかかると、カメラを装着し走る姿を屋台のおばちゃんに鼻で笑われた。「二度とイカ焼きなんか買ってやるものか」と心の中で悪態をつく。
そして「審判の楠」だ。最終コーナーには、何と参道のど真ん中に楠の木が男たちをあざ笑うように立っている。手前でスピードを緩め、かろうじて衝突を回避できた。
約230メートルある参道を駆け抜け、本殿は目の前。木製の「えびす坂」を一心不乱に駆け上がった——。
さあ、ここまで読んできたあなたには、百聞は一見にしかず、実際の映像をご覧頂きたい。おばちゃんの笑い声が確認できるだろう。
(昼寝ピコ太郎)
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