慶大言語文化研究所主催の公開講座「アジアの諸文化とジェンダー」が先月7日、14日、21日の3週にわたって、三田キャンパス北館ホールで行われた。今回の講座は外部から講師を招聘し、講義形式で行われた。文化ごとに存在する「性差」について、アジアのケースを取り上げながら講義が展開された。
 
第1回目は、東京大学東洋文化研究所准教授の後藤絵美氏による「イスラームの啓典とジェンダー 男女のあり方と役割を中心に」。イスラーム教の啓典である、クルアーンの解釈の多様性について取り扱われた。注釈学者によって、男女のあり方と役割の解釈が異なる。「男性優位」から「男女同等」へと移り変わる解釈が、解釈者の経験、彼らが生きた時代や社会の思想傾向、ジェンダー観の変化とともに語られた。
 
第2回目は、一橋大学名誉教授の坂元ひろ子氏による「中国の身体文化とジェンダー 近代を中心に」。中心的なテーマは「纏足」である。足の小ささが究極の美しさであるとされ、幼いころから足を変形させ加工させることを習慣としてきた中国の女性たち。彼女たちがいかに表象されてきたかを紐解く。そして纏足に対する批判が近代においてどのように展開されたのか、中国の政治史とともに、求められる女性像の変遷を追いかけた。
 
第3回目は、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授の伊藤友美氏による「現代上座部仏教世界の比丘尼 ジェンダーとヒエラルキー」。比丘尼とは、上座部仏教における女性出家者のことを指す。スリランカとタイにおいては、女性出家者の集まりである「比丘尼サンガ」を継承してこなかった。「比丘尼サンガ」を継承しないことで両国には比丘尼が不在であった。両国の近年の新たな比丘尼サンガの復興が、宗教と女性の関係とともに講義された。