「老舗」と呼ばれる店がある。小さな和菓子屋、名物の味を守り続けるカレー店。現在の大手企業の中にも「老舗」は多い。
この言葉から思い浮かべられるのは、伝統、格式、信頼、歴史の継承。脈々と続く確固たるものを感じる。
「老舗」という言葉は、「仕似せ」から来ているという。先代の仕事に誠実に向き合い、それに似せた営みが継承されゆくさまを思う。
幸いなことに慶應塾生新聞はこれで537号、再来年には50周年を迎える。僭越ながら、学生新聞の「老舗」とも言えよう。
ところで、今あなたは何の上に目を走らせているだろう。新聞の小欄か、それとも手のひらや机上の液晶画面か。第1号が世に出た時には想像もできなかった時代。そんな中、大学生の新聞離れは確実に進む。もはや、「仕似せ」だけでは通用しない。
だが今はチャンスでもある。新聞という物体がなくとも時間や場所を問わず記事に接触できる環境。速報、検索の概念。可能性ははるか先へ広がっている。
340年前の呉服店も、時代とともに姿を変えてきた。今、大学生である自分たちが、この「新聞」の今を、これからを新たにつくっていく。未来の「老舗」の姿を見るのが楽しみでならない。
(青木理佳)