多くの地方都市は今、深刻な問題に直面している。少子化や過疎化、大規模なショッピングセンターの進出などにより、かつて活気に溢れていた商店街は、人通りの少ないシャッター通りと化しているのだ。
城下町、そして交通の要所として栄えた高崎市も例外ではない。かつては個人経営の店が多く存在していたが、後継者問題などにより閉店している。
「街を活性化するには、個々の店や街路が魅力的でなければならない」と市長の富岡賢治さんは語る。高崎市は、様々な問題を抱える個人経営の店を助成すべく様々な政策を行ってきた。「絶メシリスト」は、こうした政策の一環として、今年9月にウェブサイトとしてオープンした。
「絶メシ」とは、このままの状態が続くと「絶」えてしまうかもしれない「絶」品グルメを指す。
サイトでは「絶メシ」に認定された店の基本情報のほか、歴史や店主の人柄がわかるインタビュー記事を閲覧することができる。
そのほか、「門外不出をあっさり公開!」と題してレシピを公開したり、後継者を募集したりするなど、ユニークなコンテンツが数多く用意されている。
「絶メシ」は、市の予想を超える大きな反響を呼んでいる。このような斬新な企画はどのようにして生まれたのか。
企画の発端は、民間との意見交換だ。街を活性化させるため、市外から観光客を集める方法を協議した。高崎市の場合、有名な観光スポットが無く、仕掛けがより重要になってくる。その結果、流行しているものを紹介するのではなく、あえて地元の人しか知らない店を広く知らしめた方が良いという結論に至った。
しかし公的機関という性質上、市役所自体が飲食店を評価し、選定することは難しい。そこで、大手グルメ雑誌の編集者などで構成される「絶メシ調査隊」が結成され、市役所は調査隊に選定を一任するという形を取った。調査隊は、聞き込み調査などの結果に基づき、自らの足で店に赴き、選定しているという。
そういった地道な調査が功を奏し、「絶メシ」に認定された店は市民でも知らないマイナーな店も選ばれた。市長でさえも半数しか知らなかったという。一部の区域でしか知られていなかった絶品を見事、発見することに成功したのだ。
絶メシに認定されている昭和12年創業の松島軒の店主は、「PRの効果を感じている。商売が繁盛して少しでも後継者問題が解決すれば嬉しい」と語る。
ミニカツ丼とラーメンのセットは650円。素朴な味わいゆえに、毎日食べたくなるような優しい味がした。高崎市でしか食べられない「絶メシ」。是非足を運んで、味わってみてはいかがだろうか。
(山本啓太)