桜の開花宣言と共に、同じキャンパスで、同じ時を過ごした先輩が次の舞台へと歩を進めた。出会いも多いが別れも多いのがこの季節、春である
▼<これやこの/行くも帰るも/別れては/知るも知らぬも/逢坂の関>。蝉丸は平安時代にこう詠んだ。小倉百人一首にも収録されていることから、知っておられる方も多いかもしれない
▼私がこの歌を初めて聴いたのは小学生の時である。当時の先生から「簡単に言うと、人生は出会いがあれば別れもあるっていう意味だよ」と、歌の解説をされたが、いまひとつピンと来なかった
▼それから十年ほどの時を経た今、その意味の無常感におぼろげながら理解が及ぶようになった
▼桜の満開が告げられる頃には、キャンパスは不安にも似た希望を胸に抱く新入生で賑わいを見せる。彼らもまた、机を並べた友人や後輩に別れを告げたばかりだろう
▼良い出会いをすれば、必ず良い別れができるわけではない。中には辛い別れもある。だが、出会いなくして別れはない。一つの出会いは、一つの別れへと結びつく。そして、次の出会いへとつながっていく。笑顔で出会い、笑顔で別れられる。春をそういう季節にできればと思う。
(大熊一慶)