今年のアカデミー賞を賑わせたことでも記憶に新しい『ラ・ラ・ランド』。ストーリーはもちろん、多くの人が熱くなったのは、やはりその「ミュージカル」部分だろう。頭に残る歌と軽快な踊り、色鮮やかな衣装にラブロマンス。心躍るエンターテインメントを詰め込んだ映画『ラ・ラ・ランド』にも大いに影響を与えたであろう往年の名作が、『ロシュフォールの恋人たち』(1967)だ。
1960年代に優れたミュージカル映画を製作した監督ジャック・ドゥミによるフランス映画である。この作品は、究極のエンターテインメント映画と言っても過言ではない。
物語は双子の美人姉妹とその母親のそれぞれの恋模様をテンポよく追うことで展開される。まずこの双子姉妹、いわゆる「夢見がち女子」である。芸術家を志す姉妹はそれぞれの夢を追いつつ、まだ見ぬ運命の人に思いを馳せ、いつか恋に落ちることに本気で憧れ悩むロマンチストたちなのだ。物語の終盤で姉は音楽、妹は踊りで成功しようとパリに立つことを即決する。「非現実的」だと突っ込みたくなるよう生き方だ。しかし自分の気持ちに潔いほど真っすぐでそれを行動に移す彼女たちは、リスクを恐れて時に行動することに躊躇してしまう現代人にある意味勇気を与える。
物語が良ければ歌も踊りも負けていない。旅の芸人役には『ウエスト・サイド・ストーリー』のジョージ・チャキリス。双子の姉、ソランジュと恋に落ちる音楽家役には『雨に唄えば』や『巴里のアメリカ人』のジーン・ケリーと豪華な顔ぶれが揃う。彼らのキレの良い歌とダンスを拝めるだけでミュージカル映画好きにはたまらないだろう。
衣装も見逃せない。50年経った今でもとってもファッショナブルな、色鮮やかな衣装たちは南仏の港町ロシュフォールに射す明るい太陽の光によく映える。登場人物たちが歌って踊る街中でのシーンでは、音楽に合わせて踊るカラフルな全身タイツの踊り子たちが目に入る。一見奇妙な風景も「ロシュフォールワールド」では違和感がない。映画を作り出す大事な一要素なのだ。
歌に踊りに衣装に物語、四拍子揃ってこうも絶賛したくなるような映画にはなかなか出会えない。『ラ・ラ・ランド』熱がなかなか冷めない貴方に、ぜひ観てほしい作品だ。
(友部祥代)