慶應義塾常任理事で文学部教授の長谷山彰氏(64)が慶大の次期塾長に選任されたことが、先月20日三田キャンパス東館での記者会見で明らかになった。長谷山氏は会見で慶大の国際化と多様化の推進を強調した。任期は今月28日から2021年5月27日までの4年間となる。
本選任は、現塾長である清家篤氏の任期満了に伴うもの。臨時評議員会で次期塾長に選任された長谷山氏が、清家氏とともに報道陣の前へ姿を現した。清家氏からの挨拶ののち両者は握手を交わし、長谷山氏が今後の抱負を話した。長谷山氏は「世界から高く評価される大学となれるよう尽力する」と語り、スーパーグローバル事業等の国際化プロジェクト推進や、一貫教育校の海外学習促進を掲げた。また現在、首都圏出身の学生が多く多様性が薄れてきているとし、地方や海外からの学生を積極的に受け入れていきたい意向を示した。
研究支援としては、人文系学問分野も積極的に奨励したい考え。競争的資金は即効性が求められ、長期熟成を要する研究には適さないため、自己資金の充実を図り研究環境の改善等を進める方針だ。
また、「大学には文化を創造し社会にそれを発信する使命があり、世界標準の大学を掲げるためには博物館が必須」とし、現在図書館などで展開されている分散型の展示施設に留まらない、本格的な博物館の建設を示唆した。施設整備としてはほかに、授業時間以外でも教員と学生で知的交流ができるような施設の整備や、LED照明の増加など環境に配慮したエネルギー政策への転換を進めていくという。
本選任にあたり、慶大の学部等の全12部門が第一次塾長候補者を選出。ついで各部門の教職員からなる推薦委員会による投票で、上位3名が候補者として塾長候補者銓衡(せんこう)委員会に推薦された。推薦委員会は1回目の投票で候補者を5名選出し、2回目の投票で候補者を岡野栄之氏、長谷山彰氏、細田衛士氏の3名に絞り込んだ。続いて、銓衡委員会が3名のうち1名を塾長候補者に選定。4月20日の臨時評議員会において長谷山氏が次期塾長に選任された。
なお推薦委員会における長谷山氏の得票順位は2位で、最多ではなかった。この結果に疑問の声もあがったが、得票順位は最終決定に直接の効力を持たず、銓衡委員会での選考材料の一つとして扱われたという。規約にのっとった方法だと清家氏は話すも、非民主的だとして批判の声も集まっている。長谷山氏は報道陣からの質問に対し、「私は選挙の過程に全く関与していないので、選挙そのものについて答えられる立場ではない」と回答を避けた。
長谷山氏の専門は日本法制史。慶大法学部・文学部を卒業後、大学院文学研究科修士課程を修了。同博士課程単位取得退学後、法学博士の学位を取得。駿河台大学法学部教授を経て1997年から慶大文学部教授。常任理事に就任したのは2009年6月。ほか体育会相撲部長を務めるなどさまざまな職務に尽力してきた。