慶應義塾のカリキュラムの特徴として、音楽の授業が充実していることが挙げられる。また、日吉メディアセンターには、音楽関連の映像資料が揃っている。総合大学でありながら、音楽に触れる環境に恵まれているのだ。
しかしながら、クラシック音楽に対して、とっつきにくい、あるいは難しいといったイメージを持っている学生も多いのではないだろうか。
そこで、音楽評論家として活躍しながら、母校である義塾で教鞭をとっている加藤浩子先生に伺った話を交え、クラシック音楽という新しい趣味を提供したいと思う。
「楽器を習っていない限り、日常的に触れる機会がない」と思われがちであるが、実際には、無意識のうちにクラシック音楽を耳にしていることが多い。
例を挙げてみよう。サッカーワールドカップで使われていた曲は、ヴェルディ作曲のオペラ「アイーダ」からの、トリノ五輪で荒川静香選手が金メダルをとった際の演目は、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」からの一曲であることは有名である。最近では、犬のお父さんが出てくる携帯電話会社のCMでも、クラシック音楽が使われている。
クラシック音楽に親しむ第一歩は、好きなものを見つけること。「クラシックの名曲には、どこかで聴いたことがあるものが多い。CDやラジオを活用して、好みの曲を見つけてもらいたい」と、加藤先生は話す。ピアノを題材にした漫画やドラマもあり、登場人物が演奏している作品を聴いてみるのもいいだろう。
ある程度知識や経験のある人には、演奏会に足を運んでもらいたい。近頃では、一時間弱という短時間の上、低価格で鑑賞できるコンサートも増えてきており、手頃さから老若男女問わず大人気である。また、学生券を設定している公演も多く、半額になる場合もある。
加藤先生おすすめの鑑賞方法は、「聴き比べ方」。同じ楽曲を、異なる演奏者や歌手で聴いてみると違いがあり、より自分の好みを発見しやすくなるという。
他の学問と同じく、音楽にも探究の際限はない。クラシック音楽の魅力について、加藤先生は次のように話した。「聴けば聴くほど、歴史的背景をはじめ、様々なことが知りたくなって奥深さを感じる。クラシック音楽は、歳をとってからも付き合える、一生の友達になり得る」
ヨーロッパでは、伝統的文化として、総合大学で音楽科目が設置されていることは、極めて一般的だという。先にも書いたが、義塾は日本の総合大学の中で、音楽に対する環境がかなり整っている。それを活用して、興味を広げるきっかけにして欲しいと思う。
日々変化する流行の波の中でも生き残っているクラシック音楽。敷居は、決して高くない。
(入澤綾子)