≪熊本城≫ 修復・再建まで長い道のり
熊本市の観光の目玉であるこの場所は震災から約1年が経過した現在でも痛々しい姿のままである。13の重要文化財すべてが損傷し、64か所、全体の3割に及ぶ石垣が被害を受けた。現在は石垣の点検と改修が進められている。櫓や天守の土台となる石垣が崩壊したことにより、上に立つ建造物に被害があろうとなかろうと、建造物を別の場所へ移動して石垣を修復した後に元に戻す作業が必要となる。
このような複雑な作業のために、熊本城の修復・再建には数十年、約634億円という途方もない時間と労力がかかるとされる。熊本城の復興はまだまだ始まったばかりである。
≪JR九州 豊肥本線 肥後大津駅≫ 住民の足、途絶える
震災により、阿蘇大橋や国道57号線など重要な交通インフラが崩壊した阿蘇地域。熊本と大分を結ぶJR豊肥本線は肥後大津駅から阿蘇駅の間で運休が続く。また、南阿蘇鉄道も全線17.7キロのうち10.6キロが不通となっている。
通学に電車を利用していた学生のために、現在は阿蘇と肥後大津駅を結ぶ臨時バスが運行している。また、車の運転が難しく、熊本市内、大津町内の病院への通院や買い物が困難となった高齢者もバスを利用しているが、片道数時間を要し困難な状態が続いている。震災から約1年が経過し、復旧工事が進められているものの、再開のめどはたっていない。
≪益城町≫ 住民が主役の復興
益城町は熊本県の中でも特に甚大な被害を受けた地域である。震災から約1年を迎える現在でも倒壊家屋等の公費解体撤去が行われており、平成29年3月2日現在64・75%が解体され、12月までの撤去完了を目指している。また、町内に18か所、1562戸(約3900人)の仮設住宅を整備し、平成28年6月14日から順次入居を開始した。
益城町は復興計画策定への住民意識の反映を掲げており、住民の意見交換会、応急仮設住宅入居者との意見交換会、復興計画説明会などが積極的に行われている。また、復興に対し若い世代が意見を出し合う「益城未来トーーク」など住民が主役の復興計画策定が実施されている。
(世古宗大士)