言語学コロキアムが先月12日、慶大三田キャンパス北館大会議室で開催された。「進化における言語の外在化」をテーマに、MIT教授、東京大学特任教授である宮川繁氏が講演した。

まずは進化の中での言語の発生過程を考えた。言語の誕生には徐々に発展したという説と、10万年ほど前にほぼ完全な形で突然起こったという説がある。宮川氏は後者を支持しながらも、言語の基となる部分は以前から存在していたと考える。その上で、言語には語彙的な層と表現をつくるための層があるとし、自然界に既に存在していたこの二つを人間が統合した結果、現在のような言語を獲得したと指摘した。

次に、宮川氏はアフリカのコイサン民族に注目した。ゲノム解析の結果、20万年前にホモサピエンスが現れたのち12万年前に最初に分かれたのがこの民族だと明らかになった。宮川氏はコイサンの言語のみが持つ「クリック音」を言語の外在化の形の一つと考える。世界の言語には共通の潜在的な基盤が存在し、分岐後にこれが外在化したと述べた。

また、約20万年前から4万年前のネアンデルタールが残した環状に並ぶ石筍や装飾品、埋葬の痕跡を基に、ある程度の抽象的思考の存在を見出した。

最後に、奥深く危険な洞窟で一部の場所にのみ描かれた絵画を取り上げた。これを洞窟内の音響と関連付け、音を視覚的なものとして表す抽象的思考の存在を指摘した。

参加者から幾度も質問が飛ぶなど、研究の可能性の見える場となった。