それはある日のことだった。
寒かった冬が終わり、春が顔を出そうとしているころ。夕方の桜木町駅の改札前で彼女が待っていた。会ったことはなかったけれど、一目見たときにああ、この人だなとすぐに分かった。モデルだと言われても全く違和感がない。向こうもこちらに気付くと嬉しそうな笑顔を見せた。
4月から3年生になる武田莉奈さん。行き先はお任せすると言われたので、とりあえず横浜赤レンガ倉庫の方へ歩き出す。彼女はあまり横浜に来たことはないらしく、その街並みをとても気に入っていた。「こういうところデートで行くのいいですよね」とつぶやく。
クラシックバレエを17年習っていて、趣味はミュージカル鑑賞。中学、高校は女子校だったという。お嬢様のようなイメージがあると言うと、「動物園ですよ」と笑って答えた。大学の志望理由は、まず規模が大きい方が色んな人に出会えるからだという。政治学やメディア、民主主義に興味を持っていたため法学部政治学科を志した。大学に入って思ったのは、本当に様々な人がいるということ。ただ、「変わってる人の方が面白い」。自分の価値観を広げられるのに大学はうってつけの場所でもある。今興味を持っているのはマーケティングや消費者心理。将来のことはまだ決まっていないが、好きでやりがいのある仕事に就きたいと語った。
赤レンガ倉庫のそばを通り、山下公園に足を向ける。左手には港に停泊している船が見え、公園の少し奥にある沈床花壇にはバラが咲き誇っている。この辺りをドライブデートしたいな、と言う彼女に好きな男性のタイプを聞いてみると「優しくて笑顔がクシャッとなる人、包容力のある人」。俳優で言うと高橋一生で、年上の方が好みだとか。
橋を渡り、港の見える丘公園へと向かうとき、自分をどんな人だと思うかと聞いてみると、「ポジティブだとは思います。寝たらなんでも忘れてしまうんです」。もう少しキャンパスアイドルっぽいこと言った方がいいかな、そう言って笑った。展望台からの景色には「すごい!」と思わず声を上げていた。夕陽が沈みつつある中、港や横浜ベイブリッジが眼下に広がり、彼女と見つめるその眺めは素晴らしいの一言に尽きた。
(はしれ!チバケンミン)
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