「偽装勧誘・ダミーサークルに注意!」。カルト宗教団体への注意を呼びかける、慶大オリジナルチラシの文句である。見たことのある塾生は多いだろう。
大学内でサークルやゼミなどを装い、団体への入会を勧めるカルト宗教団体の活動が全国的に問題となっている。カルト団体は1年を通じて勧誘活動をしているが、特に4月のオリエンテーション期間中、新入生を狙って勧誘を活発化させる。
そもそもカルト団体とは何か。学生総合センターによると、カルト団体にも多様な形があり、明確な定義は難しいという。カルト団体は実態を隠して活動するため、特徴もつかみにくい。
唯一どの団体にも共通して言えるのは、絶対的な教祖と教義の存在だ。一般的にカルトとされる団体の活動は宗教に関係する場合が多い。
カルト団体の勧誘手口は巧妙だ。基本はキャンパス内や駅などでの声がけ。アンケートへの協力を求めるなど、最初はごく自然に接近してくる。組織届を大学に提出しキャンパス内で活動している例も多くの大学で報告されている。
しかしどれだけ巧妙に偽装しても、カルト団体にはほころびがある。活動資金の出所が不明、目的があいまい、勧誘時に説明されていた活動内容から離れてきた、などの不自然な点がある団体には注意が必要だ。
カルト団体の問題を考えるうえで重要なことがある。「カルト宗教団体に入信した人は自分を被害者だとは思っていない。入信した本人は自らの生きがいとして積極的に活動している」と学生総合センターは指摘する。
カルト団体に入りやすいのはまじめで素直な性格の人だ。実際に勧誘活動をしている人も「いい人」に見えることが多い。「いい人」が多いため、勧誘された人にとって団体は居心地のいい場所となる。
カルト団体の正体が明らかになるのは、勧誘された人のマインドコントロールが進んだ後。正常な判断ができなくなってしまった人を、第三者の手で元の生活に戻らせるのは難しい。
例年、慶大は塾生に対しカルト団体への注意を呼びかけている。一昨年の秋頃からは大学構内に看板を設置。新入生にチラシを配布するようになったのは昨年の4月からだ。塾生は盛んな注意喚起の声を心に留め、カルト団体の問題の深刻さを今一度認識してほしい。
(小柳響子)