昨年6月に文部科学省OBの紹介のもとで慶大に文科省出身者が再就職していることが今年2月、報道された。これが「天下り」ではないかという疑惑が持ち上がったものの、2月21日に文科省が発表した再就職等問題調査班の中間報告により、違法性のないことが報告された。
弊紙の取材に対し、慶應義塾広報室は「本学では天下りであるとは認識していない」とした。
2008年12月から国家公務員法に規定された再就職等規制により、現役職員による再就職のあっせんは全面的に禁止されている。また、現役職員自らによる利害関係先への求職活動も禁じられている。
慶應義塾広報室によると、慶大は現役の文科省職員とのやり取りは一切しておらず、あくまで文科省OBとの関わりにとどまるという。「OBから文科省に再就職に関する報告があり、文科省側もそれを認識していた」との報道もあったが、慶大としては文科省が関わっていたという認識はなかったとしている。
また、昨年6月に再就職した元文科省職員は3月31日付で文科省大臣官房付として退職しているが、その10年以上前から出向を繰り返しており、前日の3月30日までは公立学校共済組合理事の任に就いていた。文科省の中では出向扱いであったが、慶大がそれを認知したのは一連の問題の報道後のことであり、採用時点では文科省を退職済みの人材だという認識であったという。
慶大によれば、この職員の採用はあくまで文科省OBからの情報提供によるもので、文科省からのあっせん等を受けていたかどうかについては全く知る立場になかったという。2015年の春頃、大学行政に関する専門的経歴をもつ人物を採用しようと慶大側から文科省OBに対し人材の情報提供を依頼し、2016年1月にFAXにてOBから略歴を受領。面接も行い、採用を決定。任用時は塾監局参事、現在の役職は学術事業連携室長だが、いずれも国への補助金申請等に関わる業務ではなく、文科省との利害関係は発生しないという。なお、学術事業連携室は慶應学術事業会や、各地のタウンキャンパス・シティキャンパスとの連携に関する事項を担当する部署である。
この文科省OBから人材の紹介を受けての採用は、ほかに1例確認されている。この事例では2010年2月21日まで(独)日本スポーツ振興センターに出向、22日に文科省を退職した。その後文科省OBを通じ求職活動をし、3月の面接を経て4月から慶大に任用された。この人物は2015年3月をもって慶大を退職している。求職活動、面接が文科省退職後であったため問題はないと考えられ、文科省の調査においても指摘されなかった事案である。
なお、この2名より前に文科省を退職し慶大に再就職した例も確認されているという。これは2008年からの規制以前のことであり、たとえ文科省の人物が関わっていたとしても問題はないと考えられている。
文科省は早稲田大学における文科省現役職員による規制に違反する行為などをはじめとする事案について再就職等監視委員会から調査を要求され、再就職等問題調査班を設置し調査を進めている。「文部科学省における再就職等問題に係る調査報告(中間まとめ)」では、「慶應義塾大学事案」について、「法に規定する再就職等規制に違反する行為は確認できなかった」と報告された。文科省は3月中をめどに最終報告を発表するとしている。