「グラウンドの中でも外でも、選手を支えていこう。そして下の代に何かを残せる代にしよう」。それが、この一年、慶大蹴球部を引っ張ってきた鈴木達哉主将の思いだった。鈴木主将は現在、環境情報学部に所属する4年生。春からは社会人チームでラグビーを続けることが決まっている。
主将は他の幹部と異なり、その代の部員のみの話し合いで決まる。主将に決まったとき、すでに春の試合にはけがで出られないことが分かっていた。出場できない分、主将としてグラウンド外での仕事をしっかり行おうと決めた。けがが治った夏からは、「自分はあまり言葉がうまいほうではないので、プレーでチームを引っ張っていこうと思っていた」という。
今年は、「この4年間で一番まとまりのあったチームだった」と充実した表情で振り返る。今年の4年生はおおらかで、いい意味でも悪い意味でもフランク。だからこそ、厳しく接することを意識してやってきた。また、チーム一丸となって戦っていこうという思いから、「ワンチーム」という言葉をスローガンに掲げた。結果的に負けてしまったものの、帝京大や天理大といった強豪校相手に競った試合を展開できたのではないかと語った。印象に残っている試合は明大戦と早大戦だという。明大戦では、最後まで粘り強く自分たちのカラーを貫いてきた明治を相手に苦杯を嘗めた。早大戦では、その伝統的な試合に選手の気持ちが高ぶっていたのを感じたという。観客の温度も早大戦は特別なものがある。しかし、選手としては、あくまで対抗戦の中の一試合であり、次へ繋げるための試合であるから、平常心で戦うことが重要だと語る。
悔しい思いをした2試合から、「接戦のときどのように動けばいいのかを学ぶことができた。それをしっかり流経大戦でも活かせた」と負けを無駄にしない強さをのぞかせた。
試合に練習にと忙しい毎日だが、週に一度、月曜日にオフがある。オフの日の過ごし方を尋ねると、体のケアや趣味の釣りを楽しんでいるそう。「大学からの趣味だが、同期にも釣り好きが多いので、朝から海へ行って、ゆっくり釣って帰ってくる。寮へ帰ってからは釣った魚をみんなでワイワイ調理する」と楽しそうなオフの過ごし方を教えてくれた。そういったオンオフの切り替えはとても大切だという。
学業との両立も大変だったのではと聞くと、「キャンパスが離れているため通学は大変だったが、きちんと授業に出席することは意識していた」。今年度は医学部の古田京選手の活躍なども目立ったが、そのような周りの姿を見て、「やる気次第」だと感じるという。
最後に、これからラグビーを始めたいと考えている受験生へメッセージをもらった。
「ラグビーはいろいろな人にチャンスがある競技。大柄な人も小柄な人も、自分の活躍できるポジションがある。バラバラな一人一人が協力して、一つになって戦う。痛そう、辛そうといったイメージはあると思うけれど、それを上回るかけがえのないものを得られるはず。だからぜひ飛び込んできてほしい」
この一年、鈴木主将が後輩たちへ残したもの。その答えがみられるような試合に今後も注目していきたい。
(山本理恵子)