大学選手権ベスト8で今季を終えた慶大。大学日本一の夢は叶わなかったが、慶應「らしさ」が随所で光る一年となった。

慶大はこの一年、慶應「らしさ」としてタックルの強化を第一に取り組んできた。この努力によって、試合の主導権をなかなか相手に渡さず、安定した試合運びが可能になった。この点は年間を通じての大きな成果と言えるだろう。

加えて試合運びを容易にするうえでブレイクダウンの強化も効果的であった。このタックルとブレイクダウンの強化は一人が不十分であるとチーム全体が機能しなくなる可能性があるなかで、全員がしっかりと取り組みチームプレーとして大きな効果を持ったという意味で、選手一人一人が真剣に練習に取り組んできた証といえる。強いタックルとブレイクダウンのために強化したフィットネスも確実に効き、後半の優位な試合展開を可能にした。

その一方、試合で勝ち切るためのアタックの面では、まだまだ課題が残った。相手のディフェンスラインを崩す突破力、サイドを有効に使うためのパス技術、ゴール前での集中力。結果を残すためにはこれらの要素は必須となる。慶大はこれらが十分でなかった。特にゴール前での集中力については、意識を少し変えるだけで対策が打てたはずである。ゲームの規律がラグビーにおいてとても重要な要素になりつつあるなかで、その意識をもう一度チームで共有する必要があるだろう。その他の点についても時間をかけて練習で改善していく必要がある。

様々な課題はあったが、全体を通して振り返るとこの一年の慶大は大きな進歩を遂げた。自身の強みをしっかりと試合に残し、スーパープレーも数多くあった。大学日本一に向けて大きな収穫のある一年だった。
(野澤昂至)