今年8月のリオオリンピックで観客席から出場選手に声援を送った選手がいる。その選手はもうすでに東京オリンピックに目を向けていた。10月5日に行われたフェンシング女子フルーレジュニアワールドカップで優勝した、宮脇花綸さん(経2)だ。
幼稚園年少のときからフェンシングを始め、高校3年次にユースオリンピックで銀メダルを獲得。順調に結果を出し、リオオリンピック出場を期待されていた。しかし大学進学後は思うような成績を残せず、出場を逃した。当時のことを宮脇さんはこう振り返る。「強くなって勝ちがついてくるという考えが自分には合っていたのに、勝つという意識が先行してしまい、目の前の一試合一試合に対する焦りがあった」
スランプだった大学1、2年の間にも、得るものは多かったという。シニアの選手と試合をすることで、シニアの選手は作戦をよく考えながら試合をしていることを実感した。試合中に作戦を変えてくるシニアの選手と対戦を重ねることで、様々な局面に対応できるようになった。
こうしてスランプを抜け出しつつある時期に、ジュニアワールドカップで優勝を掴んだ。ジュニア最後の年で負けられないという思いがあったものの、あまり準備ができておらず不安があったため、優勝決定の瞬間は嬉しさとともに驚きがあったという。「シニアの舞台で経験したことが活きた」と宮脇さんは振り返った。しかし、ここで満足はしない。もっとできるはずと来年4月のジュニア世界選手権に目を向けている。
目標は東京オリンピックで金メダルを獲得すること。高校1年の冬に北京オリンピック銀メダリストの太田雄貴選手に出会ったことが宮脇さんの人生を大きく変えた。それまではオリンピックは遠い話だと思っていたうえ、フェンシング選手として生きると断言することが怖かったという。しかし、オリンピックに行くという前提で太田選手に話をされたことによって意識が変わり、オリンピックを本気で目指すようになった。
東京オリンピック出場をめぐるレースが始まるまで3年。時間はあまりない。まずこの1年間の目標は「変わること」。行われる試合全てに出場することに慣れるところから始め、身体的にも精神的にも大きく変わる年にしたいという。2、3年目の目標は現在60位の世界ランキングを上げること。シニアの試合でベスト16以上に入ったことがないため、ベスト16に入る回数を多くし、各試合での順位の平均を上げたいという。勝ち上がることで強い選手との対戦の機会が増え、経験値も増すはずだ。
東京オリンピックへの思いは変わらないと語る宮脇さん。目標に向けてコツコツと今必要なこと、できることをやっていくと強く語る姿に、今後の活躍を期待せずにはいられない。
(井上知秋)