みなさんの周りに日本語を話すことのできる外国人はいるだろうか。彼らの多くはどこかで母語とは別に「外国語」として日本語を学んできたはずだ。日本語を学ぶとはどのようなことなのか。慶大日本語・日本文化教育センター所長である友岡賛教授に話を聞いた。
慶大別科・日本語研修課程は、主に外国人留学生を対象に日本語や日本研究のための講座を開設している。「話す・聞く・読む・書く」の4技能における日本語科目、また日本の社会や文化に関する知識を深める日本文化科目が設置されており、学生は各々自らの興味に応じて時間割を組む。学生約180人、教員は専任・非常勤を合わせ約50人で構成されている。
設立の過程は約60年前にさかのぼる。1958年より慶大において外国人留学生に対する日本語教育が始まった。当時としてはかなり先駆的な動きであった。後の1990年に、学校教育法に基づき、学部とは異なる別科という課程として別科・日本語研修課程が設立された。
講座の履修は、厳しい書類選考を通過した留学生のみが許可される。これから日本語を学ぶことをスタンスとしているゆえ、選考では日本語能力とは別の要素が重要視されている。
またプログラムもかなりタフなものが用意されている。近年はコミュニケーション能力の向上に着目した学びを実践する授業が主流となりつつある。一方で、慶大の日本語教育は伝統的な方法で、文法からきっちり積み上げることを軸としている。カリキュラムは容易なものではないが、その分やり遂げた後は質の高い日本語を身に着けられる。少人数クラスで細かくレベル分けされており、まじめに取り組む学生は1年足らずでしっかりとした日本語を話すことができるようになる。
現在日本では留学生を増やそうという動きが顕著であり、大学側もその流れの中にある。留学生を増やす一番効率的な方法は、英語で日本社会や文化を学ぶことのできる授業を増設することだろう。その授業に出席すればわざわざ日本語を勉強せずとも日本について学ぶことができるからだ。しかし、結局のところ語学の勉強なしに日本について深く学ぶことは難しいと友岡教授は言う。「日本語で日本社会や文化を学ぶことが大切。その国の言葉をもってしないと結局芯の部分まで理解できたとは言えないのではないか」。語学を学ぶことは、その国の基礎を学ぶことなのだ。
語学の勉強は地道で、労力のいる作業だ。現に外国人にとって日本語を身に着けることは簡単ではないであろう。しかし、そのはじめの一歩なしに、他国の理解への道は始まらない。そこに「外国語」を学ぶ意義があるのではないだろうか。
(青砥舞)
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