現在、「第4次産業革命」と呼ばれる動きが世界各国で始まっている。
産業革命は、これまで3回起こったとされている。第1次は、1760年代から起こった、水力と蒸気力を用いた機械制工業の成立を指す。第2次では1870年代から電気を利用した大量生産方式が確立した。第3次は1970年代から始まり、コンピュータとロボットの導入による工場の自動化が進んだ。そして今、あらゆるモノやサービスをインターネットに接続することで製造業の効率化、高度化を目指す第4次が起ころうとしている。
発端は5年前、ドイツが提唱した「インダストリー4.0」だ。これは産官学が連携して、IoTを活用して自ら考える工場、「スマートファクトリー」を実現するなどの動きのことだ。アメリカなどでも同様の取り組みが活発になっている。
これに対し日本では、一部の企業での先進的な取り組みはあるものの、企業間や政府との連携体制がなかった。その中で昨年6月、法政大学教授の西岡靖之氏を発起人として「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアチブ(IVI)」が設立されたことは注目に値する。製造業のIT化の機運を背景に、産業界からの要望で誕生したIVIは、製造業の革新を目指す企業間の連携をサポートし、大小多くの企業がメンバーとなっている。
IVIの掲げる目標の一つに「ゆるやかな標準化」がある。西岡氏によると、製品の仕様などを統一する標準化は企業ごとの差別化がしにくくなるという難点があるため、標準の強制力を弱めることで個々のレベルに合わせることができるという。
IVIでは過去1年間で、IoTを用いた業務を想定したシナリオを作り、それをシステムとして実施し、発表してきた。具体的なユースケースを提示することで、企業にとってIoTのやり方の指針にもなる。こうした動きは大企業だけでなく、中小企業でも活発になっている。
スタートはやや出遅れたものの、まだ各国とも手探りの状況で、レベルに大差はない。世界に冠たるものづくり大国である日本には、いまだ大きな可能性があるといえるだろう。
(根本大輝)
IVIシンポジウム
先月13日、IVIシンポジウム「プラットフォーム時代のものづくり」がTKP市ヶ谷カンファレンスセンターで開催された。約500人が来場し、最後は懇親会で会が締めくくられた。
IVIでは、ものづくりとITが融合した新しい社会をデザインし、それぞれの企業が連携して先導を取るための取り組みを進めている。現在、IoTや自動運転技術、ネットワーク技術など、高度で最先端な技術によって時代が変化しつつある。ものづくり大国である日本も、新しいルールでの競争の中で勝ち抜くことが出来るのかという段階にきている。「人間」が中心となったものづくりが、IoT時代にどう変わるのか、変わるべきかを議論する。
シンポジウムには、経済産業省製造産業局の参事官の徳増伸二氏も参席し、「第4次産業革命のインパクトと求められる施策とは」について講演を行なった。その後、IVIエバンジェリストから日本の取り組みの先をいくドイツの現状報告がなされた。
午前の部の最後には、西岡靖之理事長が「製造業による製造業のための「つながる工場」プラットフォームのビジネスモデル ~加速するIoT時代を突っ走れ!~」というテーマで講演を行い、IVIの現状や今後の展望について参列した聴講者に取り組むべき方向性を示した。