慶應義塾大学全塾協議会(以下、全塾協議会)は塾生の最高意思決定機関である。塾生による自治組織であり、全塾生のための福利厚生の増進を目的とする。三田祭実行委員会や文化団体連盟といった所属組織の会計に不正がないよう、厳格な監査を行うのもこの組織だ。毎年の選挙で決まるのは全塾協議会を運営する事務局長と次長だが、この仕組みが来年度から変わる可能性が出てきた。
全塾協議会のあり方が変わろうとしている。8月期の定例会では事務局長が現規約の改正草案を提出し、内容が詳細に審議された。草案はホームページに公開され、今月10日まで塾生から意見を公募していた。実現すれば2012年以来、実に4年ぶりの改正となる。
特に注目されている点は「塾生代表」の新設だ。
規約改正の目的は運営の安定化、効率化である。全塾協議会の主要業務は「福利厚生の向上」と「学生自治(特に自治会費の会計・監査)」だ。現行の規約では事務局がこれらを一手に担っているため、業務の局所集中や引き継ぎの難といった問題が続いてきた。事務局と塾生代表が業務を分担することで、より高質で円滑な運営が実現される。
塾生代表は全塾生の中から選出され、主に「塾生の意見を集約し、福利厚生を向上させる」役割を担う。なおその方法は定めていないため、臨機応変に発案することも仕事の一環となる。また全塾協議会の最高責任者として、定例会や臨時会といった議会の招集、議決の承認、大学当局や学生団体、塾生、大学外部の団体との交渉などの業務も行う。まさに塾生と大学内外部を繋ぐ窓口といえよう。
塾生代表の設置に伴い、事務局は常設の執行機関となる。現行規約では選挙に当選した事務局長が事務局を組織する。そのため、選挙結果によっては業務のノウハウを持たない事務局が新たに組織される可能性がある。また、全所属団体合わせ数億円規模にもなる会計監査は負担が大きく、安定した体制を整える必要があるのだ。選挙によらず局内から新局長を選出することで、メンバーが選挙の度に変わるというデメリットが解消される。
全塾協議会が目指す形として、現事務局長の髙井康佑さん(法4)は「組織としての安定」の他に「知名度の向上」を挙げた。現在最も危惧されているのは立候補者が出ないことで選挙そのものが行えないことだという。選挙に対する関心はかなり低く、一昨年度に投票率が10%を切って選挙が不成立となったのは記憶に新しい。
全塾協議会が消滅した場合、学生自らが予算・活動を管理するという「学生自治」が不可能となる場合がある。「塾生自らの義塾の創造」という理念の達成は一人ひとりの票にかかっている。
塾生代表への立候補は学部3年生以下の塾生なら誰でも可能である。(ただし全塾協議会所属団体の代表者は不可)「3万人のために頑張りたい人に務めてもらいたいです。全塾生に目を向けることを期待します」と髙井さんは語る。また、立候補しないまでも「誰を選ぶか真剣に考えてほしい」と選挙の重要性を強調した。10月期の定例会で改正が決議されると、12月の選挙では塾生代表を選ぶ運びとなる。選挙が成立し次第、新規約の効力を発揮する予定だ。