「クラウドファンディング」が近年、日本でも広まりつつある。プロジェクトを実現するために必要な資金の支援をインターネット上で不特定多数の人に求め、共感した人が支援するというものだ。クラウドファンディングサービスmoonshotを運営する株式会社Wicrep代表取締役CEOの諸澤正樹氏にその仕組みと可能性について聞いた。
日本でクラウドファンディングが始まったのは2011年。諸澤氏はちょうどその頃、SFCの授業でクラウドファンディングの存在を知ったという。友人がカフェの立ち上げにクラウドファンディングを利用しているのを見て、素晴らしい仕組みだと感じ、2014年、大学4年の時に研究室の先輩らとmoonshotを立ち上げた。サービス開始からの2年間で、moonshotを利用して行われた69件のプロジェクトのうち47件が目標金額を達成し、支援者は3157人、支援金額は3789万円を超えた。
クラウドファンディングにおいて、多くの支援者は見ず知らずの人にお金を出す。「そのお金には支援者の想いが乗る」と諸澤氏は話す。支援金額に応じてサービスや商品がリターンとして手に入る購入型のクラウドファンディングでは、まだ世に出ていない商品やサービスがいち早く支援者に届けられるため、支援者はそれらを目当てに支援することが多い。一方、NPOなど社会貢献のために行われているプロジェクトの場合は、支援者はそのプロジェクトに共感し賛同して支援する。「自分にはできないけれど、この人に世の中のためになるような活動をしてほしい、応援したい」という想いがそこには込められるのだという。
資金を調達する側もクラウドファンディングに特別な想いをかける。これまでは知り合いから資金を集めていたものの目標金額に達せず諦めかけていたプロジェクトも、インターネット上で不特定多数の人に支援を呼びかけることで実現できることがあるからだ。同時に、プロジェクト自体の認知度を高めることにも繋がる。
支援者と資金調達者。クラウドファンディングで繋がった両者の関係は、資金調達が達成された後も続く。プロジェクトの進行はmoonshotの活動報告ページに更新され、実際にプロジェクトが遂行されている様子を確認できる。また支援者は気になることや応援のメッセージをプロジェクトリーダーにコメントすることもできる。
さらに、「インターネット上で繋がった両者が、現実の世界でも繋がるということもよくある」と諸澤氏は語る。クラウドファンディングでは、支援のリターンとして支援者がイベントに招待される場合がある。その際に、現実の世界で両者が出会い、その後も関係が続くこともあるという。
見ず知らずの人が「想い」ひとつで繋がるクラウドファンディング。インターネット社会の新たな潮流の一つとして、今後も目が離せない。
(井上知秋)