夜空の星を眺め、遠く広がる宇宙に思いをはせる。誰しも一度はそんな経験があるのではないだろうか。人は、いつの時代も空のかなたを夢見て、時にそれを芸術という形に表してきた。
『宇宙と芸術展』では、さまざまな時代、さまざまな土地の人々の宇宙観に触れることができる。東京・港区六本木の森美術館で来年1月9日まで開催中だ。
この展覧会で『竹取物語絵巻』が展示されていることが、一見不思議に思われる。しかし、日本で最古といわれる物語、竹取物語は、月の国、つまり宇宙から来たかぐや姫の話である。これは日本最古のSF小説であるといえるのかもしれない。地球の外から来た人たちの様子を想像して物語が作られ、絵が描かれた。
また、レオナルド・ダ・ヴィンチの残した膨大な手稿の中の、地球と月の満ち欠けの関係について図を描きながら考察したものや、地球に落下した隕石からつくったという刀、『流星刀』など貴重な資料も展示されている。
宇宙へのさまざまな関心の中で、とりわけ宇宙人についてはさまざまな推測がされてきた。江戸時代、UFOのような形の「うつろ舟」という物体が流れ着き、中に異様な姿の女性が乗っていたという。その伝承が絵とともに語られている。
展示を通して見ていくと、今、当たり前のものだという感覚にあることが実は過去の積み重ねの中にあることが思い出される。改良を続けた望遠鏡で星の様子を見る。空に輝く光の点を結び、動物や道具、神話の登場人物を描く。常識を覆す発見を発表する。ここはそうした軌跡を見られる場所でもある。
もちろんこの展示には、未来へ向かっている現代のものも含まれる。日本初の民間による月面探査ローバーが展示されている。また、デザイン性とバイオ技術を融合させ、月で生活するために生物の力で酸素を発生させる機能を備えた色鮮やかな衣服は興味深い。
中でもチームラボによる映像作品は目を見張るものがある。広い空間に映し出された宇宙空間を、太陽の化身ヤタガラスが飛び回り、ぶつかって生命の花を咲かせるのだ。この不思議な空間を体験した者はここに新たな宇宙像を見るだろう。
宇宙の姿がだんだんとわかってきた今でも、未だ解明されていないことばかりである。その中で、自分の目で見えること、研究の成果で明らかになったことを起点にし、宇宙の姿を思い描く。この展示を見たら、あなたはどんな宇宙を想像するだろうか。
(青木理佳)