今年度の司法試験では、7‌6‌4‌4‌人が受験し、1‌5‌8‌3‌人が合格した。慶大は例年とほぼ同じ合格率を保ち、合格者数1‌5‌5人で1位の座についた。全体の受験者数および合格者数が大きく減るなかでも、慶大法科大学院は変わらず高い結果を残した。その強みは何か。また来年春に開校予定のLLMとは何か。慶大法科大学院委員長の片山直也教授に話を聞いた。

法務省は今月6日、平成28年度司法試験の結果を発表した。慶大法科大学院からは1‌5‌5‌人が合格し、法科大学院別の合格者数では3年ぶりの1位となった。全体の合格者数は1‌5‌8‌3‌人で、合格率は22.95%と前年度の1‌8‌5‌0‌人、23.08%より落ち込む結果となった。

政府は、法科大学院開設の時点で「合格者数年間3‌0‌0‌0人」を目標としていたが、昨年6月に半減させ「最低でも年間1‌5‌0‌0人程度」とした。片山教授は、「法曹志願者が激減していくなかで、維持すべき合格者数として示したもの」と話し、今年度はこれをぎりぎり超す結果となった。

合格率に大きな変化はないにも関わらず、前年度の出願者数9‌0‌7‌2‌人に対し、今年度は7‌7‌3‌0‌人に減少し、今年度の合格者数も前年度より2‌6‌7‌人減った。その理由としては、法曹界を志す者および、司法試験や法科大学院の受験者数減少が大きな要因といえる。

また今年度の既修者コースの合格率は30.7%、未修者コースは11.6%であった。両者の差は依然として残っている。法科大学院を修了せず、予備試験受験を経て合格した者は2‌3‌5‌人で全体の14.8%と昨年度以前より増加した。

総受験者数が減るなかでも合格者数でトップに立ち、合格率を維持した慶大。そこには慶大法科大学院ならではの特徴がある。基本カリキュラムは実務や司法試験に直結するよう組まれている。教員と学生の距離も近く、学生同士が互いに刺激し合い切磋琢磨する学習環境は、予備試験経由の司法試験受験では得られない。「先端性」「国際性」「学際性」の3つの理念の下、柔軟な教育を受けた慶大法科大学院生は、司法試験合格後の司法修習でも高く評価されている。

2‌0‌1‌7年春、慶大で国内最初の専門職大学院としてのLLM(Master of Laws)が開校する。LLMとは米国と同じように、グローバル法務を英語で学ぶことができる1年間の法律専門教育課程だ。LLMにより慶大は、高い英語力を有する日本人、そして外国人が法律を学ぶ環境の選択肢を増やす。片山教授は、「グローバル法務に対するニーズを掘り起こし、法曹を志す者を増やせるよう、LLMを突破口に慶大が先導していきたい」と語った。