オリンピック支援団体は数多く存在するが、経済界の側からオリンピック、そして、スポーツ界を支援する組織がある。経団連のオリンピック・パラリンピック等推進委員会だ。

経団連の本来の活動は、経済活動の環境整備である。例えば、税制、社会保障制度、外交など企業に関係することを幅広く扱っており、それぞれのテーマごとに委員会を設けている。そして、新たにスポーツに関する委員会を創設しようと発足したのがオリンピック・パラリンピック等推進委員会である。委員会には経団連に所属する企業200社ほどが参加し、トヨタ自動車社長の豊田章男氏、パナソニック会長の長榮周作氏が委員長を務める。この委員会を担当する経団連教育・スポーツ推進本部の左三川宗司氏に話を聞いた。 

企業のトップが選手のもとへ

経済界は、目先のリオオリンピックのその先を見つめている。今、とりわけ力を入れているのは2020年東京大会で活躍できるアスリートを支援することだという。東京大会が盛り上がるためには日本人選手の活躍は必須である。しかし、資金面で悩んでいる選手は多く、4年に1回のオリンピックでしか注目されない競技は国内トップの選手であっても活動環境が整っていないのが現状である。この委員会ではそのような選手に光を当てる活動を行っている。

例えば、活動の一環として、経営者である企業のトップが全国各地のアスリートを訪問し、コミュニケーションを図ることで、彼らが何に困っているのかを聞き、経済界でどんな支援ができるのかを検討している。

経営を行う企業のトップが直接話を聞くことで、企業全体で支援する形が定まる。例えば、経団連に加盟している企業の施設を練習で使用したいという要望がアスリートからあった場合には、施設の担当者が上層部に話を通すよりも、企業を経営する上層部が関係部署へ指示することで、企業全体として支援することが可能になりやすいといったメリットがある。

そうして集まった情報やデータを共有し、年数回の会議で報告を行っている。アスリートの現場で起きていることを経済界全体で把握し、何が足りないのか、どのような支援が必要とされているかに対して共通認識を深める場がこの委員会だ。

アスリート雇用問題、選手をサポートするトレーナー雇用の問題など経済界から解決できる問題は数多く存在する。都市開発、訪日外国人の増加などオリンピックの開催が経済にもたらす影響は大きい。しかし、経済がスポーツに与えることができる影響も計り知れない。

オリンピックの先を見る

スポーツと経済の結びつきという視点で見ると、オリンピックは経済界から見ても節目である。しかし、それをゴールと捉えるのではなく、東京大会を契機に、その後も持続的な経済発展、震災のあった東北を含めた地方活性化などを続けていく必要があると左三川氏は語る。

東京オリンピック閉幕後にも経済界として形に残るものを形成し、経済の発展が止まることがないようにしなければならないのである。

2020年東京大会を成功させるため、また、その後の日本経済を持続させていくためにもスポーツ界と経済界の結びつきはこれからますます必要になっていくだろう。
(世古宗大士)