普通、インカレと全日本選手権で立て続けに個人優勝したと聞けば、小さいころから競技を続けているエリート選手をイメージするだろう。しかし当の本人である大井一輝さん(法3)は、2‌0‌1‌1年の高校入学後にアーチェリーを始めたというから驚きである。

翌年にはいきなりインターハイで個人優勝を遂げ、一躍全国的に注目を浴びた。それ以来、ジュニア日本代表の常連として海外の選手たちともしのぎを削ってきたが、「アーチェリーでは早熟な選手も多いし、これまでの結果は周囲の人のサポートあってこそ」とあくまで謙虚な姿勢を見せる。

シニア選手となった今年2月には、更なる成長を見せ冒頭の2大会で優勝。6月中旬にトルコで行われたワールドカップでは、日本代表の一員として、リオ五輪男子団体の出場権を世界と争った。惜しくも出場権獲得はならず、「実力を出し切れば勝てる相手だったが、そこで出し切れなかったのが力不足」と悔しさを噛みしめた。しかし同時に「技術面でもっと進歩していけば通用するという手応えはある」とより一層の成長を誓う。

普段はマイペースで、友人といる時は「ボケ倒す」ことが好き。釣りや携帯ゲームが大きな楽しみだという。卒業後は競技継続を前提に就職活動を進め、東京五輪を目指していく意向だ。

彼は最後に「誰もが応援したくなるような素晴らしい実力と人間性を兼ね備えた選手になれるよう、努力していく」と意気込みを語ってくれた。東京五輪へ向け、是非とも名前を覚えておきたい存在だ。
(辰巳龍)

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