予想外の事態
人間の仕事がAIによって奪われ、今ある仕事の半分は消えると言われている。まさかと思うような事態がこれから起きようとしている。
AIの登場と発展によって、人間の雇用形態は確実に変化していく。就活を目前に控えた私たちにとって、この問題は最大の関心事となりそうだ。AIに関する多くの著書を持つ、慶大法学部卒業の小川和也氏に話を聞いた。
進化するAI
AIは自己学習を重ねることで、どんどん賢くなっていく。未だに勝利のためのプログラムが作成されていない囲碁で、AIがプロ棋士に勝利したことは記憶に新しい。AIの勝利には10年以上かかると予想されていたが、それをはるかに上回って達成されたのだ。
トヨタやリクルートは既にAIの研究所を設立し、AI研究は急速に進んでいる。さらに日本政府もAIの開発に対し予算を割き始めている。
今後5年から10年の間は、AIの進化をじわじわと感じるだろう。しかしその後の10年は、AIによって激変する社会を目の当たりにすることとなる。自己学習によってAIのIQは、30年後に1万になると言われている。AIは人間が到底太刀打ちすることができない、まさに脅威となるのだ。
AIに奪われる職業
理系の人気就職先、製造業の工場における単純作業や操業は、既にデジタル化が進んでいる。高い知能を持つAIは、蓄積したデータを解析し、工場の効率化を図るなど、活躍の場を広げる。
一方、文系の人気就職先である金融業界にも影響を与える。ペーパーレス化が進む中、事務作業がAIに取って代わられつつある。さらに現在、AIが企業の情報を収集し、融資先や貸付の金利などを決定するケースも増えている。メガバンクにおいても、人間が不要になるのは時間の問題かもしれない。
変化する時代の中で、私たちは人生を左右する仕事の選び方を改める必要がある。就職人気ランキングだけを頼りにするのは大変危険である。
私たちに必要なこと
今後AIによって知的産業は更なる発展が見込まれる。また知的産業に留まらず、社会全体でAIと関わる仕事の需要が高まるだろう。
私たちが今後就活をする上で大切なことは何か。小川氏は次の2点を挙げる。一点目は、AIによって変わる社会への危機感を持つこと。世界中の人と関わり、テクノロジーの情報を敏感に察知することが重要である。日本人の学生は、意識の面で他の国の学生よりも遅れている。
二点目は、自分だけの武器を磨くことだ。例えば感性や想像力などは、AIに勝る人間の最大の強みだろう。能力やスキルは、生き抜くための切り札になる。
私たちは今の生き方自体を見直すことが必要だろう。AIが未来を作るのではなく、人間が未来を作ることを忘れてはならない。「社会の変化に気づき、対策をとった人だけが今後の人生を楽しむことができるのではないか」と小川氏は語る。
(玉田萌)