日本を代表するデザイナー三宅一生の展覧会『MIYAKE ISSEY展:三宅一生の仕事』が6月13日まで国立新美術館で開催されている。三宅氏は「一枚の布」というコンセプトを貫きつつ、次々と革新的な服を発表してきた。
展覧会ではテーマごとに3つのセクションにわけて服が展示されている。1970年代の服を通して基本の考え方を伝えるセクションA、1980年~1985年のプラスチックなど異素材の服を展示したセクションB、最新のテクノロジーとの融合で作られた服が集められたセクションCと三宅一生のデザインの歴史を追える構成になっている。
初期の服が集められたセクションAでは、一枚の布でできた左右非対称の「コクーンコート(1977 A/W)」や、江戸時代から昭和にかけて使用されていた防寒着のどてらをラップコート風にアレンジした「丹前(1976 A/W)」などが展示されている。
セクションBでは衣服とそこに生命を宿す身体との関係を追及し、服づくりには使われたことのない素材を用いた服が展示されている。トルソーを繊維強化プラスチックでかたどったカラフルな「プラスチックボディ(1980 A/W)やシリコンを染み込ませた一枚の布を手で造形した「ウォーターフォールボディ(1984 A/W)」などが配列されている。
最後のセクションCでは5つのテーマに分けて展示されている。三宅一生が1992年のバルセロナ五輪の際に、ソ連から独立したばかりのリトアニア公式ユニフォームを作成したことから派生した服「仮想オリンピック(1993 S/S)」は三宅独自のプリーツの技術で、国旗をモチーフに制作されている。元々10か国だったのを今回の展覧会に合わせて21か国に増やし、さらに日本のデザインを一新した注目作品だ。また一枚の布から作られた三次元の造形を折りたたみ、プレスをかけて平面に仕上げた「132 5. ISSEY MIYAKE」や、一枚の布、A Piece Of Clothの頭文字と新時代という意味のエポックがかけられた「A-POC」は完成形が組み込まれたプログラムを用い一本の糸から製作されているため切取線で切るだけで服が完成するなど、一枚の布の最先端を見ることが出来る。
フランス留学中の1968年に五月革命に遭遇したことから、衣服を通じてより良い社会を作ることを信条としてきた三宅一生の服は、日本の伝統素材から最新の素材まで視覚でも楽しめるのが特徴だ。国立新美術館は建物自体も凝ったデザインになっており、一見の価値がある。これまで展覧会に行ったことがないという方もぜひ訪れてみてはいかがだろうか。
(小宮山裕子)