2013年に厚生労働省が発表したデータによると、20代男性の2割、女性の1割が肥満体型であるらしい。
健康で引き締まった体を保つには適度な運動と休息が大切だが、忙しい日々のなかで自発的に運動を続けることは難しい。20代で運動習慣があるのは男女ともに15%程度にとどまっている。
戦後の教育改革で大学においても体育が必修化された。慶大では塾長だった小泉信三が「塾生皆泳」を掲げていたことに由来し、特に水泳に重点をおいた体育を行っていた時代があった。1960年、現在の協生館の位置に50メートルプールが設置されてから文部科学省が体育の必修義務を解除するまで、約30年にわたり全員が水泳を学んでいた。基本体育と呼ばれた学期中の講義は男女で競技内容が分かれていたが、水泳だけは共通して行われていた。また基本体育の中で泳げるようにならなかった学生には夏季休暇中に水泳の補習まで行う徹底ぶりだった。
そもそも慶大は福澤諭吉の教訓である「まず獣身を成して而して後に人心を養う」、すなわちどのような事情があっても人間はまず身体の健康が大切であるという考えから、勉学に先立って堅強な身体を養うことに重きを置いている。1948年に体育研究所が設置されてから紆余曲折を経て、現在は日吉だけでも球技13種、武道3種、エクササイズ8種、その他13種とさまざまな競技が設置されている。慶大における体育教育の重要さが推測できる。 だが1993年に体育の必修が解除されると、履修率は低下し始めた。1998年までは9000人を超えていた履修者が、年を追うごとに減少し続け、2008年の慶應義塾創立150年記念事業による体育施設の改修計画によって体育実技の授業数が減少したことで塾生の体育離れが深刻化してしまった。
この状況に危機感を抱いた体育研究所は実技科目の授業数を増やした。加えて体育科目パンフレット「当世塾生気質体育編」の配布やウェブページの改定などを行った結果、履修者数はV字回復し、2013年度、2014年度においては定員に対する充足率は88%に達した。中には履修者過剰により抽選が生じている競技もあり、もはや体育競技の設置数は充分とはいえなくなってきている。
青年期の運動不足は将来体調不良を引き起こす重大な問題だ。慶大はこれまで若者の運動離れに対して広報活動で対策を講じてきた。その結果今やサッカーなどの人気競技の設置数は需要に追いついていない状況だ。塾生の運動意欲を高めるためにも体育競技の更なる充実が求められている。