今日の成人式に対する印象は必ずしも良いものとはいえない。マスコミの報道で目に付くのは、首長挨拶の最中に雑談し、会場の外で騒ぎを起こす新成人の姿だ。荒れた成人式が報じられる中で、その意義を疑問に思う若者も少なくない。しかし成人式は形式ばかりの単なるしきたりではないはずだ。私たちは成人式とどう向き合えばよいのだろうか。
成人式での若者の行動が問題になり始めたのは約20年前。2001年には、高知県知事が騒ぐ新成人を一喝するなど、問題は深刻化した。同年、事態を憂えた学者らにより新成人式研究会が発足。「成人式大賞」を運営し、新しい成人式の在り方を目指す動きへの後押しを始めた。
研究会事務局の大谷昭治郎氏は新成人の問題行動の原因について「時代が急変する中で、成人式が式典中心の従来型のままであることに、TVなどの多様化する娯楽を享受してきた若者たちが変化を求めているのでは」と分析する。
実際に新成人の行動が大きな事件に発展する場合は少ないが、参加者が首長の話を聞いていない、会場の外で雑談してい
るという現象は各地で起きている。「友人との久々の再会で話が盛り上がるのは大人でも同じ。先に団欒の時間を設けて式典を後に回す、などの工夫により成功した事例もある」と大谷氏は指摘する。
最近では若者主体の成人式が増えている。「成人式大賞」で受賞する団体も、新成人からなる実行委員会を設けているところが多い。昨年より実行委員会を組織し成人式の改革に努めたのが、「話題賞」を受賞した厚木市だ。
厚木市の実行委員会は昨年の成人式より、市長や議長の祝辞を新成人との対談形式に変更。従来は芸能人を呼んでいた出し物の時間を、中学校からのビデオレター放映、厚木市に関するクイズ大会や有志によるステージ発表に充てるなど、数々の改
革に取り組んだ。
昨年の実行委員長を務めた西巻香里さんは「事前の情報発信ではパソコンに比べ利用しやすい携帯を活用。当日も携帯を
使ってクイズに回答してもらい、全員が主体的に式に参加できるよう工夫した」と話す。参加者からは「20歳の仲間がこれだけの成人式を成功させたことで希望が持てた」などの感想が寄せられた。
改革の反面、課題も残った。昨年は新成人を居住地域ごとに前・後半の2部に分けて式を行ったが、中学校区とのずれが生じ、一部の新成人が中学時代の同級生とは別の部に参加する結果に。今年はその反省を生かし、出身中学校ごとに分けた。
また、昨年は司会者をプロに委託したが、今年は自分たちの手で成人式を作りたいという思いから、実行委員自らが司会を務めることとなった。
今年の副実行委員長の菊澤あずささんは「まだ2代目なので、試行錯誤の連続。さらに改善が進むよう、来年の実行委員への
引継ぎにも力を入れたい」と話す。
成人式の意義について西巻さんは「周りの人に感謝の気持ちを伝える機会」、菊澤さんは「大人になることについて考えるきっかけ」と答えた。成人式に絶対的な意義を見出すのは難しいが、少なくとも何らかの大切な節目であることは確かだ。
成人式の在り方を模索中の今だからこそ、成人式に参加し、率直な感想を伝える必要がある。すでに成人式を終えた若者の声は、今後の改善に繋がるはずだ。ポスト従来型の成人式を創るのは、外でもない、私たち若い世代である。
(小柳響子)