「学生」は文化である。
子どもと大人の中間を生きる彼らの思考は常に自由で、時にとんでもないことを思いつく。
だから「学生」は面白い。
学生文化は、時代を映す鏡だ。
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写真を撮るという行為の目的は本来、その思い出を残しておくことであったはずだ。
1999年、写真はカメラで撮るもの、という学生たちの常識を覆したのがカメラ付き携帯電話の登場だ。感度の高い学生たちはこの文明の利器に真っ先に飛びついた。何枚でも取り直せるデジタルカメラの利点とその思い出を何枚でも持ち運べる携帯電話の良さが合わさった代物だった。ゼロ年代の学生たちは彼らの「ケータイ」に友人たちとの思い出を収めた。
同時期に、特に女子学生の支持を多く集めたのが「プリクラ(通称)」だ。1995年に「プリント倶楽部」として登場した。撮った写真がその場でシールに印刷される手軽さが人気の理由だ。その後、落書き機能や、より美しく写る(「盛る」)ための機能を備えたりしながら今でも進化を続けている。
そして近年、スマートフォンが登場し携帯電話のカメラとしての機能は今まで以上のものとなる。大学での講義中メモを取る代わりにスマホでスクリーンを撮影する光景はこの頃からだ。過去に撮り溜めた写真は、スマホを開けばいつで振り返ることができる。写真アルバムをポケットに入れていつでも持ち運べるようになったことは学生生活に大きく関わる変革だった。学生生活や友人との思い出を「記録」するためのものとして写真は学生たちにいつの時代も寄り添っていた。
しかし、「記録」という目的そのものを覆すスマートフォンアプリがいま学生たちの人気を集めている。snapchatというアプリが代表的だ。写真を撮り落書きなどを加えた上で友人と気軽に送り合うことができる。このアプリが革新的なのは送った写真が10秒以内に消えてしまう点だ。会話と同じ感覚で写真や動画を送り合うことができる。後日見返すためではなく相手に状況をその場で伝えるためだけに「消費」される写真が撮影されるようになった。文章よりも、相手の視覚に訴えるこの新しい通信手段は、アニメフィルターの合成を行うことのできる機能を備え、世界中で利用者を増やしている。
過去を置いて先へ先へ、新しい世界に臆することなく飛び込んでいく学生たちの文化を、この連載では追いかけたい。
(平沼絵美)