慶大で、体育を学ぶ。あまり印象は強くないかもしれない。しかし、体育科目の時間割を見ると、その多彩さがよくわかる。

慶大の体育研究所が設置している科目は体育学講義と実技科目に分けられ、必修ではないが選択科目として履修できる。テニスやバドミントンといった代表的なものに加え、自動車など見慣れない種目も設置される。

なぜこれほどまでに多様な科目が開講できるのか。1‌9‌9‌5年まで体育はずっと必修科目であった。慶大体育研究所所長の石手靖教授によれば、「まず体をつくり、それから学問をしよう」という福澤諭吉の精神から、体育が重視されていたのだ。必修授業として皆が履修するため、たくさんの塾生を受け入れるべく多くの科目が開講された。

初期は授業の運営体制に体育会の存在が深く関わっていた。体育会の各部は自分たちの技術向上を図ることだけでなく塾生全体への体育の奨励という目標も同時に持つ。そのことを背景に体育会の部それぞれが体育の授業を担当し、「実技指導員」という位置づけで塾生やOBが指導を行った。これは福澤の考える「半学半教」にも通じる。

現在は様々な学問を卒業単位に入れようと体育は選択科目となったものの、体育会が発祥となった数々の種目は今も各部OBが講師として授業を担当したり、部員が手伝ったりしている。特に体育会の本拠地、日吉では充実した施設のもとで他大学にないような種目の授業も行われている。

そもそも塾生が体育を履修する意義は何か。石手教授は、学問をする上での、また社会に出てからの行動力を養えることを挙げる。また、様々な学年の人と接点が生まれ、先輩の大学生活の様子を聞くこともできる。さらに、体を動かすことの奥深さも知ることができる。これらは慶大の体育科目の特色でもある。

これだけ多くの体育科目は履修選択に迷うかもしれない。そんな時は、「好きな種目を選ぶ、また一方で、やったことのない種目にトライすることもできる。ただ、楽に単位をとる目的での履修は避けてほしい」という。

慶大での体育、履修すれば、キャンパスでのあなたの新しい一年が豊かなものになるはずだ。
(青木理佳)

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