TEDx Keio High Schoolが先月13日、慶應義塾高等学校で開催された。会場には約100名の父兄や生徒が集まり、 温かい拍手のなかTEDx講演は成功に終わった。この講演は、発案から企画、登壇者の募集、会場づくり、当日の運営まで、教員のサポートを受けながらも全て高校生たちの手によって実行された。
TEDとはTechnology Entertainment Designのことで、ニューヨークに本部を置く、世界的規模の講演を行う非営利団体である。このTEDが行う講演会をTED Conferenceといい、これまで様々な分野で活躍する専門家が自らの意見を世界に向けて発信してきた。TED Conferenceと同じ講演を世界各地で行おうと、地域性を活かしながら、「広めるべきアイデアを共有する場」の精神のもとに創設されたのがTEDxである。
今回行われたTEDx Keio High Schoolでは、スピーカーは全12人で、うち高校生が7人、塾生が1人、塾員が4人だった。どの登壇者も学問、文化、芸術、科学技術など多岐にわたる分野で活躍した経験をもとに、各々の個性的なアイデアをプレゼンテーションした。1人あたり10分前後のスピーチだったが、高校生も適宜スライドを用いながら、緊張した様子を見せることなく堂々とした演説を披露した。中には英語でスピーチした登壇者もいた。
高校生スピーカーの一人、慶應義塾高等学校3年の亀山尚輝さんは日本テレビ放送網の『高校生クイズ』にて全国優勝した経験をもとに、「知は力なり」というスピーチをした。知識が豊富な者は、特定の分野の知識に優れている「specialist」と、まんべんなく様々な知識を持つ「generalist」に分けられる。亀山さんは両者を使い分けていくべき方法として、ルソーの「青年時代は知識を磨く時であり、老年は実践する時である」という言葉を引用した。その上で、学生時代にgeneralistとして広範囲にわたる知識を得ながら自らのやりたいことを見つけ、社会に出てからはspecialistとして専門的な事物を追求するべきであると主張した。
講演後、「とても緊張した」と語る亀山さん。聴衆がスピーチに集中しやすいように、スライドの文字の量を極力抑えたり、自分の体験を基にしてつくったスピーチが「自慢ぽく聞こえてしまわないように」したりと演説に工夫を凝らした。
TEDx Keio High Schoolの主催者であり、この発案をしたのは慶應義塾高等学校2年の福井一玄さんだ。発案したのは講演の1年ほど前だったが、最初のステップとして校内での採用を得るため手を尽くした後も、TED本部のライセンスを取得するのに苦労したという。TED側から提示された制約のなかでの実行は決して容易でなく、講演場所の確保も困難であったが、福井さんの「高校生が登壇できる機会をつくりたい」という信念は強かった。講演終了後福井さんは、TEDx Keio High Schoolの今後について、「塾高70周年の記念にホールが設立されるので、そこで開催できたらなと思っています」と更なる目標を語った。