昨春に出来たばかりの「慶應K-POPダンスサークルNavi」(以下Navi)は、韓国のアイドル、いわゆるK-POPアイドルのダンスを模倣して踊る活動をするサークルだ。振り付けだけでなく衣装、メイク、表情に至るまで忠実に本物を再現する。普段の練習は、ダンスの基礎を徹底しながらグループごとに行っているそうだ。しかし、このNaviの特徴はこれだけにとどまらない。
K-POPコピーダンスサークルNaviは、メンバーが日中韓の三ヶ国の出身者で成り立っている。練習中には三ヶ国語が飛び交い、インターナショナルな空気感が広がっているようだ。国や言語、文化の違いを超えてひとつの公演を作り上げていく。
一般的な国際交流サークルでは、日本人学生と留学生が集まって雑談をするのが主な活動内容で、国際交流をすること自体が目的のところが多い。それに対してNaviの場合は、日中韓の部員全員がダンスというひとつの目標に向かって練習をする。ただ集まって話をするだけでなく同じ趣味を持ち、同じ目標を持つ仲間として活動することに大きな意義がある。「日本人と留学生がK-POPという文化を通して盛り上がって、頑張ることができることが魅力だ」と韓国からの留学生は言う。また留学生の目から見ると、サークルの規模が大きく大人数で踊る他のダンスサークルに比べても、少人数のNaviの方がメンバーと深い友人関係が築けて心強いと感じるようだ。留学生だけでなく、ダンス初心者にもやさしい環境だ。
サークルの活動をしていくなかで物事をはっきりと発言する留学生メンバーを見習い、日本人メンバーもダンスのミスを以前より躊躇なく発言するようになるなど、お互いに良い刺激になっている。中国語や朝鮮語選択の学生は、サークルの活動の中で語学の勉強をすることもできるという。サークルの仲間として一つの作品をつくりあげていく過程には、多くの感動に加えて大変なこともありそうだが、メンバーは口を揃えて「国籍は気にしていない」と言う。あくまでもK-POPのダンスを行うダンスサークルであり、国籍よりもダンスの実力と熱意が重要であると熱く語った。
政治的には複雑な関係が続く日中韓の三ヶ国。しかし同じ興味関心のもと、ひとつの目的を持って一緒に活動すれば、そこにはもはや国籍は関係ない。Naviから見て取れるこうした姿こそ、真の国際交流の形なのかもしれない。
(井上晴賀)