今年も国立に『荒ぶる』が響いた。1月8日、第42回全日本大学ラグビー選手権の頂点に立ったのは、今年も早稲田だった。清宮監督をして「早稲田史上最強」と言わしめた『佐々木組』。二回戦で、慶大にまさかの苦戦を強いられたチームの結末を見るため、筆者は、六年前慶大が歓喜した舞台に向かった。
あのクリスマス、タイガー軍団相手に苦しんだ姿は、もうそこには無かった。相手は九年連続決勝進出の関東学院。だが、もはや相手はどこだろうと関係ない。気付けば41―5と、36点差がついていた。決勝の得点差としては史上最大だ。それでも後半ロスタイム、PGでの得点を狙っていった。なんという強さ、勝利への執念だろうか。
前半から早稲田の独壇場だった。15分にFB五郎丸のPGで先制後の24分、BK陣の鮮やかなパス回しから球を受けたWTB首藤が独走トライを決めた。首藤はこの日2トライの活躍だった。
しかし、首藤だけではない。30分、SH矢富のパスから球を受けたのはSO曽我部。正面から迫ってきた相手のタックラーを、なんとジャンプでかわした。トライに繋げ、試合の流れを決める18点目を奪った。
早稲田の選手達の口から出てくる言葉には、ある共通点がある。「勝ったのは四年生のお陰」だと。総部員144人のうち、試合でアカクロのジャージーを着る事が出来るのは22人のみ。試合出場のかなわなかった選手の方が圧倒的に多いのだ。しかし、最後の大会への出場が果たせなかった四年生が、練習では先頭に立ってチームを盛り立てていくという。この試合の『主役』となった首藤も、五郎丸も曽我部も、試合後のコメントで盛んに四年生を立てていたのはそのためだ。
早稲田の選手達は『泣き虫』だ。決勝前日の下井草での練習然り、試合直前のロッカールーム然り、何かにつけて泣いている選手がいる印象がある。時には、清宮監督でさえも泣いている。筆者には、なぜそれ程までに泣けてくるのかはよく分からない。ただ一つ分かるは、それだけチームの結束が強く、勝利に対してどん欲だと言う事だろう。「チームのために」の精神が浸透しているからこそ、大一番を前に、感極まって泣いてしまうのかも知れない。
優勝決定後、今季での退任が確定的な清宮監督がテレビの『お立ち台』に上がった。「連覇と言えば確かに連覇。だがこれは、(主将のNO8佐々木を中心とした)『佐々木組』の勝利。強さを保てるのは選手が良いからだ」。途中、言葉が詰まった。やはり、泣いていた。そして、言った。
「いやあ、最高です!」
国立は、冬の夕陽を浴びていた。
(羽原隆森)