人の声だけを重ね合わせ、ハーモニーを奏でることでつくりあげられる歌を聴いたことがあるだろうか。「アカペラ」と呼ばれるこの音楽が、最も多くの人の元に届けられる場がある。コンテスト形式でアカペラ演奏を競うフジテレビ系「ハモネプリーグ」というテレビ番組、通称「ハモネプ」だ。放送開始は2‌0‌0‌1年。この番組を足掛かりにプロデビューを果たしたグループもある。

 

次なる舞台へと練習を続ける
次なる舞台へと練習を続ける

昨年9月、20回目の放送で、全国からの出場者の中で準優勝に輝いた「無糖ホワイト」。そのバンドのリーダーが、塾生、藤原直人さん(法4)だ。

小さい頃から歌うことが好きで、テレビから流れる音楽をよく口ずさんでいる子供であった。そんな藤原さんが、アカペラに興味をひかれないわけがなかった。高校時代、音楽好きな仲間と初めてハモネプに出場した。藤原さんにとってハモネプは、「アカペラを始めるきっかけとなった、一つの原点」だ。慶大入学後、同じく出場経験のある先輩が在籍していた慶大のアカペラサークル「WALKMEN」に入会。現在も精力的に活動している。





大学2年の時、それまでライブやイベントで顔を合わせていた他大学の友人に声をかけ、バンドを結成した。こうして集まったメンバーが、「無糖ホワイト」の6人だ。

バンドで掲げる目標は、「アカペラで全国大会優勝」。ハモネプが再び開催されることを知り、このバンドでの出場を決めたのは自然な流れであった。

予選を勝ち抜き迎えた本選の会場の独特の雰囲気は、今までに味わったことのないものだった。それでも、カメラの向こうにいる全国の数えきれないほどの視聴者たちに、自分たちの歌が届けられる、という高揚感が緊張を上回っていた。

「歌った後、正直絶対に優勝したと思っていた」。準優勝が決まった時、やはり悔しさは大きかった。その反面、納得できる歌が歌えたという実感のもとで、その場で次の活動へ気持ちをシフトさせることができた。

「無糖ホワイト」には、今月の全国大会、3月のワンマンライブが控える。CDの発売も決定した。「ライブで聴いてもらうのが一番。でも、CDという形であれば、歌を聴きたいという全国からの声に応えられる」

日常的には、ジャンルを問わず「いい音楽」を聴くようにしている。昨年11月の三田祭前夜祭でのコブクロの演奏を聴きに行ったことも大きな刺激になったという。目の前でつくりあげられる圧倒的なステージに、思わず涙した。大切にしているのは、こうして自分の中に取り入れた「いい」ものを、自分なりの形で外に出す、ということだ。

自分たちにしか作れないステージを、自分にしか歌えない歌を求めて、藤原さんは走り続ける。そのアカペラという音楽で、どれほどの人の心を動かしていくのだろう。

 

(青木理佳)